【地方移住】田舎暮らしってどうなの?本音を現地の人たち10人に聞いてきた!


海と山、素敵な景色の中で、たそがれながらこんにちは。

元板前、現在は料理に関わる仕事を頂きながら、ゆるめの都会暮らしを満喫しているロカフレライター「ぼり」です。

 

ぼくは今、東京から北陸新幹線を利用して金沢駅へ。そこからさらに電車で2時間半の場所にある、石川県能登地方、「穴水町」にきています。

 

「俺は都会から来たんだぞ」という雰囲気を存分に醸し出してドヤっているのですが、誰にも見てもらえませんでした。

 

陸地に囲まれた穴水町の海は波がなく、陸地に上がればすぐに山に囲まれる、自然豊かな「田舎」。

まさに「田舎暮らし」という言葉がしっくり来る土地です。

 

さて、タイトルにもあるのですが、みなさんは「地方移住」という言葉を聞いてどんなことを思い浮かべますか?

  • のんびりスローライフ
  • お金のかからない生活
  • 豊かな自然でノンストレス

近年、「流行り」のように雑誌やメディアで華やかに取り上げられている「地方移住」ですが、取り上げられ、発信されている情報だけが全てなのでしょうか。

 

今回はその「地方移住の実態」を調べる為に、実際に足を運んできました。

 

本題に入る前にすこーしだけぼくのお話を。

この記事を書く事になったのには、ちょっと訳があります。

 

Contents

きっかけは「地方移住への憧れ」

ぼくは昨年の夏に都内の料亭を退職し、「自分の店を持つ」という目標から方向転換をしました。
そして、都内を中心に出張調理やイベントでのケータリングなど、様々なことに挑戦してきた末、ぼくにはひとつの目標ができました。

 

「田舎でゲストハウスを運営して、生活に絡めて料理をしたい」

 

この目標と共に頭に思い浮かんだのが、石川県の能登地方にある「穴水町」。
ぼくの地元石川県の北部で、山も海もあり、能登空港があって電車での利便性もいい。
住んだことはなかったものの、遊びに行くことが多い地方でした。

ただ、条件はいいけど、現地の空気を知らずにいきなり地方移住というのはちょっと勇気がいります。

 

で、ちょっと調べてみようと思って、地方移住に関しての情報をネットで検索しても、有力な「住民の生の声」が見当たらなかったんです

 

そこでロカフレライターという立場から、「地方移住の実態を探る」という目的のもと、いろんな方にお話を伺うべく、この土地に来ました。

 

「実際に移住を考えている。だからこそまずは経験者や現地の人の生の声をお伺いしてから行動を起こしたい」

そんなぼく自身の思いから、どこかからの一面を切り取った一方通行の意見ではなく、できるだけ多くの視点の方から意見を伺ってきました。

  • 地方移住推進で活動されている企業
  • 地域おこし協力隊*1
  • Iターン*2
  • Uターン*3
  • 行政
  • 地方から離れた方

*1 地域おこし協力隊

移住者として地域に入る際に、1年から3年程度の任期を設けて、行政の仕事として報酬を頂きつつ、地方移住希望者の受け入れ補助や、町での仕事の手伝いをする方。

*2 Iターン

もともとの住民ではなく、県外から地方に移住してきた場合

*3 Uターン

一度、地元都道府県を離れた方が再び昔住んでいた都道府県に戻った場合

 

石川県鳳珠郡穴水町で11名の方にお伺いした生の声を、「地方移住」にスポットを当ててご紹介させていただきます。

 

一般社団法人「能登定住・交流機構」事務局長 太田 殖之さん

 

まずはじめにこの企画を立ち上げる際にコンタクトを取ったのは能登地方全体への移住者支援を行う太田さん。

地方移住希望者の方への案内や、実際の受け入れ先住居を探すお手伝いをするなど、能登地方に移住するとなったら一番最初に力を貸して頂ける方です。

ぼく自身も、Facebookにて太田さんの運営されている「穴水町移住定住促進協議会」のページにメッセージを送信。

今回の取材でも一番最初にお話を伺わせていただきました。

 

年間で200人の地方移住希望者と対応して感じる「地方移住に向いている人」


太田さん、宜しくお願い致します。まず、ぼくと最初に会ってみての第一印象ってどんな感じでしたか?


派手で太ってる


率直な感想、ありがとうございます。

ぼくみたいに「地方移住したい!」って方は結構いらっしゃるんですか?

(心強いな)

能登地方では特に昨年が一番多くて、年間でだいたい200人くらいの地方移住希望者の方と対応させて頂きました。


あ、予想をかなり超えてきました。3日に2人くらいのペースですね…


もうかれこれこの活動を始めて4年になり、対応してきた人数は500人を超えます。
この活動を通して、少しづつ「地方移住に向いている人」には共通点があるように思えてきました。


それぜひ、聞いてみたいです。


地方移住に向いてるなって思うのは「最低限のコミュニケーション能力がある方」か「目的がある方」です。


「スローライフがしたい方」ではないんですね。最低限のコミュニケーション能力というと、実際にはどんな力ですか?


あ、ざっくりと言えば「スローライフがしたい」でもいいです。ただ「田舎にくればなにかあるだろう」と受け身の姿勢でくる方は、残念ですが半数以上の方が半年も経たずにまた元いた場所に帰られます。


半年で半数以上ですか!?


残念ながら。あとコミュニケーションの話で言うと、自分から積極的にいく必要はありません。

もちろん、しっかり挨拶ができる、自己紹介ができるというように最低限のコミュニケーションは必要ですが、自ら壁さえ作らなければ大丈夫です。


自己紹介ができるかどうかは、会社に入るときとかも「ある一定」みたいなものはなんとなくありますよね…


地方には、都会のように仕事がこなしきれないほどあるような生活はありません。

むしろ基本的にはなにもないので、仕事を作り出す力や取ってくる力が重要になります。
パソコンを使ってネットで稼ぐなどの手段を確立していない限りは、どんどん「自分のできること」を仕事にしていかなければなりません。

そういったところでは「何ができるのか」をしっかり説明できるくらいのコミュニケーション力が必要になります。


だから最初に「あの質問」があったんですね。

 

実は、太田さんに会った際、最初にすごく短く質問をされました。「なぜ穴水なんですか?」と。

 

冒頭に書いた通り、「ゲストハウスを開業したい」という目標があったことと、Uターンの地としての魅力を感じていることをお伝えしたところ、改めて実際に必要なことについて説明をしてくださいました。

 

はい、第一の関門だと思っています。ちゃんと自己紹介ができるのか、自分が何をしたいのかをしっかりと説明できるのか。
ぼくたちは移住者を受け入れたいとは思っていますが、最初からきっとつらい思いをすることになるだろうという方には無理に地方移住を勧めません。
おおぼりさんのようにはっきりとした目標とまでは言いませんが、自分がどういった経緯で移住を考えているのかくらいは説明できないと厳しいと思うので。

地方移住にもやっぱり適正があるんですね

はい。極端な話、穴水町で餓死することはないと思います。
というか、餓死するほうが難しい。山菜がとれたり、海産物も簡単に獲れるので、食料に困ることはないんです。
ただ、村社会の中に馴染んでいけるかどうかがある意味「やっていけるのかどうか」と強く関係してきます。

なるほど。「やっていけるのかどうか」で言うと生活面ではどうですか?やっぱり都会より生活コストが低いイメージがあるのですが。

そうですね、家賃は安いと思います。ですが、田舎では絶対に必要になる「車」の維持費や、光熱費は都会での生活よりも余計にかかるので、田舎だからといって、安く済むとは限りません。

むしろ、都会の方が、未成年の医療費の控除などについてはしっかりと補助を受けられたりもします
ぼく自身がここで生活していて、そこまで田舎のほうが生活コストが安いとは思いません。

そうなんですね。個人の生活の過ごし方で変化はあるのかもしれませんが、圧倒的に安く済むのかと思っていました。

穴水町だったら、海鮮ものは安いです。ただ、野菜は普通の値段、もしくは高かったりするので、「田舎はなんでも安い」というのは違うと思っています。

仕入先に直接の農家さんだったり漁師さんがいれば安くなるのかもしれませんが、その土地で作っていないものだったら高くなっちゃうんですね。

それはありますね。でも品揃えを良くしようとしたら、別の土地から持ってこなければいけないし、全てを地産地消で済ませることはできないので。

むしろ、地方に運ぶ時点でそれなりのお金がかかっちゃいそうですもんね。
早速すごく大切なお話を伺えました。ありがとうございます。

 

「地域おこし協力隊」戸田実沙さん

北海道より地域おこし協力隊として移住。地方→地方の移住で話題となり、穴水を盛り上げる若い女性として能登地方の新聞でも取り上げられる。

また、地域おこし協力隊のほかにもフリーのデザイナーとしても活動。個人でいただいている仕事を含めて、穴水町のPRのため、イベントのチラシデザインの仕事を請け負ったりもされています。

 

移住のきっかけは能登半島地震


戸田さん、よろしくお願いします。さっそくですが、ぼくの第一印象を教えてください


チャラい


ありがとうございます。戸田さんはなんで協力隊に?


(メンタル鋼か)
私は昔、親の転勤がきっかけで、穴水に4年間住んでたんです。そして、私が北海道に引っ越しをする前日に「能登半島地震」が起きました。


ぼくもあのときはまだ石川県の実家に住んでいました。すごい揺れでしたね…


あの時、変わり果てた街を見ながら、何もできずに北海道に引っ越して、ずっと気がかりになっていたんです。でもそのまま時間が経っちゃって。
デザインの仕事を始めたときに、仕事の内容と自分のしたいことの相違で行き詰まった時期があって、その時に自分のデザインの仕事を穴水の復興やPRの役に立てたいなって思ったのがきっかけです。


そんな経緯があったんですね…今改めて、一度住んでいた土地に移住者として感じることはありますか?


地方移住を実際に体験した身として感じるのは、地方は本当に人と人との距離感が近いということです。

昨日誰かとした話が、翌日には全然違う人の元に届いているというのは本当に珍しくない話です。

地域に昔から住んでいる人同士だと、もうほぼほぼ「なんでも知ってる」状態です笑
でも、正直私たちみたいに移住してきた人からしたら、そこまで深いところはわからないので、「あ、そうなんですね〜」ってスタンスでいることが多いです。
その点は移住してきた人は、あくまで昔から住んでいる人とか、親戚関係が住んでいるとかって訳じゃないので、地方に対しての深いしがらみはないので、いい意味で入りやすいかなって思います。


地方のいいところでもあり、ちょっと疲れるところでもありそうですね。ぼくの母も元々は地方出身なのですが、そういった部分には気を遣っていました。
地域おこし協力隊の仕事を通じて感じることはありますか?


それは距離感が近いからしょうがない部分もあると思います。
この町にいる方が、みんな自分の街がいい方向に向かってほしいという意識があるので、この環境で仕事をできているのは楽しいです。

 

地方移住の受け入れを仕事とする上で大切にしていること


地方移住の受け入れって、希望者にとってはすごく勇気のいることだと思うのですが、希望者の方を案内する際などは、何か気にしていることはありますか??


もちろんこちらも穴水町に移住してくれる方が増えれば嬉しいのですが、

移住希望の方が「〇〇な暮らしがしたい」等の理想があるのと同様に、地域の方も「こういう人に来てもらいたい」などの想いがあると思うので、そこをうまくマッチングできたらいいなと思い活動しています。


距離が近いからこそ、お互いの想いにズレがあることを住みはじめた後に感じてしまったら色々大変そうですね…


はい。なので、この土地の実際の空気を知ってもらうということを目標にしています。もちろん来てくれたら嬉しいですけど、移住希望の方はいろんな地方を見てらっしゃるし、無理に魅力をお伝えするのではなく、魅力を感じてくださったのなら嬉しいなってスタンスです。


めっちゃいいですね。地方移住は受け入れがゴールではなくて、移住してからがようやくスタート地点だと思うのですが、その辺りについて何か意識していることはありますか?


仕事をいただいている私自身にも言えることなのですが、私たちができるのはあくまで、地方移住希望者の方の想いを実現できるように、地域の方とのつながりを作ることだと思っています。

その後の「つながり」をどうしていくかは自分次第なので、「田舎の人は優しいだろう」とか「誰かがどうにかしてくれるだろう」と思って来る人には大変かなと思います。


受け身じゃだめなんですね


そうですね。地方移住者の方が抱える悩みだったりぶつかる問題は、同じ体験をした方でないとわからなかったりするので、そういった方々を紹介したり、一緒に食事をしたりする機会を設けたりする、繋ぎ目の役割になるのが私たちにできることかなっておもってます。


なんか「保健室の先生」みたいだなって、今の話を聞いてて感じました。
いざ直接何かの問題解決をしてくれる訳じゃないけど、なにかの気づきをくれたり、きっかけとなる言葉をくれたり、ただただ話を聞いてくれたり。行動を起こすのは本人だっていうのは間違いないけど、きっかけさえもらえれば何かできたりするもんですもんね。


地方移住をされる方というのは、ここだけじゃなくて、色んな地域を回ってこられる訳だから、その上で「穴水がいい」って思ってもらえたのであれば、嬉しいです。
できるだけ足を運んでくださった方に楽しんでもらえるように、自分たちでサポートをしていきたいです。


地方移住を考えている方になにかお伝えしたいことってありますか?


もし検討しているのであれば、やっぱりネットや雑誌を見て想像を膨らませるより、実際に足を運んで、その土地の空気を感じてもらうのが一番良いと思います。
地元の方や移住者の方、色んな方とお話をしてみて、それでも「ここがいいな」って思ってもらえたなら、きっと実際に住んでもギャップはあまりないんじゃないかと思います。


ほんと、そうですね。たかだか数日だけですが、今こうして穴水町に来て、感じたことがたくさんあります。
ぼくは、「能登地方」として一括りで見ていたのですが、穴水町の中だけでも駅前と、海沿い、山間部でこれだけ環境に違いがあると思いませんでした。
そして、足を運んでいないのだから当然といえば当然なのですが、ここにいる方「1人1人」に目を向けることができていなかったです。
海沿いは思ったよりも静けさに包まれていたし、山がこんなに安定的に低いとも思っていなかった。
イメージが先行していたことを強く実感しました。

 

Iターン 「田舎バックパッカー」中川さん

*写真は自宅の畑で薪BBQをしてくださったときのもの。

 

バックパッカーとして全国の”きいたことがない”田舎を中心に旅し、定住の地として穴水を選んだ中川さん。これまでの活動全てをブログ「イナタビ」に書き記されています。

 

行政の方とはまた別に、ブログからの問い合わせや自身のつながりから来る移住の体験を希望される方の相談に乗るなど、個人の仕事とは別に有志で穴水町の移住希望者に対応。

 

全国を周った上で穴水を定住の地とした決め手


本日は、よろしくお願いします。中川さんとは仲良くなれそうな気がします。


ひげがあるだけで同類だと判断するのはやめてください


失礼しました。ブログも拝見させて頂いているのですが、全国をバックパッカーで回られた上で、なぜ穴水だったんですか?


奥能登の環境で言えば、標高が600m以下の低い山ばかりで、山の麓には海が広がっている。このフラットでスペース感ある自然環境がなにより好きでした。
それも含めて、最終的に決定した理由は環境と人です。
地方はそれぞれに魅力があって、北海道の洞爺湖や、四国の内海添いなど、素敵な地域はたくさんありました。
その上で、穴水の方々とはバックパッカーで離れた後も電話や手紙での交流があったりと、ずっと関わりを持ち続けてくださったんです。それがきっかけで。

実際に地元の方が受け入れてくれる姿勢でいて、それを伝えてくれるってすごく嬉しいですね


ぼくが移住した地域 岩車(いわぐるま)は限界集落です。穴水町全体の人口は、約8500人、毎年約200人のペースで人口が減少しています。でも毎年移住者がそんなにくるわけもない。自分が好きで移住した「穴水町」を維持していかなくちゃいけないとは思っています。

 

Uターン移住に大切な意識改革はまず大人から

地方としての魅力に理解がある方といったらやっぱりUターンの移住者を集めることが目標になりそうですね。その場合はやっぱり学校の授業に組み込むくらいのことをして、Uターンを意識していってもらうことが必要なのでしょうか?


いえ、Uターンをしたい町にするにはまずは大人世代の意識が変わらないといけません。

え、実際に戻ってくることになる学生さんじゃないんですか?


学生はやはり、ほとんどの方は一度穴水を離れます。「子供たちが都会に出て立派に仕事をしている」「就職は都会の“良い”会社で」というのが親世代の中で良しとされる風潮があるので、戻ってこなくていいという流れができてしまっています。

だから、地方の人口減少問題は、地方の「現場」にあると思っています。

あ、それ太田さんにも似たような話を伺いました。多くの地元学生は行政が実際にアンケートを取った際に「戻る気はない」と書いていました。その理由に書いてあった多くが親世代から「仕事がないから戻ってこなくていい」といわれるから、と。

たしかに、親世代の方からそんな風に言われると、帰りたい町として捉えるのは難しいかもしれませんね…


だから、まずは大人の世代が「自分たちが住んでいて幸せだ」「自分たちもその昔、独自で仕事を創り出してきたんだ」「今の時代に合ったやり方次第で、地方でも、仕事を創り出せるんだ」と胸を張れるような町にしなきゃいけない。親の擦り込みというのは本当に強力なんです。

だから、まずは大人の意識が本心から「子供世代にも魅力を伝えたい」って思えるようになる必要がある。


はい。「田舎でも暮らしていけるんだ」という選択肢の存在と、実例が重要になってくると思います。一度、田舎を出るのは、世の中を知るためにもいいと思います。鍛えられます。ただ、その後の選択肢に地元に戻るということがそもそもない地域では、これから先、衰退するばかりです。

それはなんだかちょっとわかる気がします。ぼくも、地元を離れることで、改めて地元の良さを知ることができたし、「都会にはないものがある」ということを知ることができました。

ぼくからひとつ、個人的に気になっていることを、中川さんの視点での感じ方をお伺いさせてください。

ぼくは「町おこし」と一言で言ってもいろいろとあると思ってて、移住者が増える土地なのか、観光地としてお客さんを招いて経済を動かしていくのかで、どういったアクションを起こしていくのかが変わるんじゃないかなって思ってます。
観光地化してしまえば雇用は生まれるかもしれないけど、地方としての住みやすさに魅力を感じている方にとっては住みにくくなる。
だからこそ、今すでに住んでいる方と自治体でどういった形で「町おこし」を実現していきたいのかが大切なんじゃないかなって。
穴水という町に魅力を感じて移住した中川さん個人の思いとしては、今後この穴水町にはどうなっていってほしいですか?

 


そうですね、ぼく個人としては、穴水の良さって、盛り上がってない、ポジティブに言えば、「ほどよい」盛り上がりってところなんです。静かだし、自然も整ってる。ぼくはこの土地が「住む」ことに適しているから移住したので、正直あんまり観光で盛り上がってほしくはないとは思っています。

観光地となればお金は動くかもしれないけど、これまで守ってきた働き方や生き方を失うことにもなりますもんね…

田舎はないものだらけです。仕事自体が整っていないから、小さなビジネスを作り上げることは意外と簡単なんです。例えば、先日近所の方が、まだ使える農機具を手放したいって言ってたけど、廃品業者に頼むにはお金がかかる。で、これってパソコンをちょっとでも使える人なら、ヤフオクで出品しちゃえばいいと思うんですけど、そのやり方を知ってる人が地方にはいないから、これは極端でシンプルな例かもしれませんが、簡単なことだけど重宝されたりします。

昔からあるビジネスでも、その時代に合わせたノウハウを取り入れることで、やっていけると思っています。今は、フェイスブック、ブログなどのソーシャルメディア含むインターネット、パソコン、スマホなどの電機機器、飛行機、クルマなどの乗り物、その他にもあらゆるテクノロジーが存在しています。それらと自身のスキルをフル活用すれば、なんとかやっていけます。

あ、そーゆー仕事の作り方なら、町の雰囲気を変える必要はありませんもんね!


あと、近日中にクリエイター/アーティスト向けのスペース貸し、バックパッカーなどの旅人向けに小規模なキャンプサイトをオープンする予定です。

わざわざ観光地化しなくても、ないものつくっちゃえば盛り上がりは作れるから、あとはやり方次第かなと。

せっかく「良い」と思えた土地なんだから、これからもあり続けてほしいですよね。ありがとうございました!

 

Iターン 「渚ガーデン」斎藤 雅代さん

穴水町の海沿いにて牡蠣の炭火焼きや海鮮を扱った飲食店「渚ガーデン」を営業している齋藤さん。

実は穴水町で第一号の「地域おこし協力隊」のメンバーだったそう。

元は東京で映像関係の仕事をしていて、仕事で穴水町よりさらに北部の「珠洲」という地域へ。

そこで、アクセスの良い穴水町への移住を考え、当時募集をしていた地域おこし協力隊へ。1年ほどで協力隊を離れ、現在の「渚ガーデン」を開業。

飲食だけに留まらず、音楽イベントの開催やサロン運営など活動は幅広い。

併設された隣の魚屋さんから直接おろしてもらう魚を使った定食には、都内であれば高級魚としてしか出回っていないような食材も惜しげなくように盛り付けられています。

 

絶景のロケーションの中で、併設された屋外テラス席で食べる海鮮ランチはもちろんのことながら美味しいのですが、齋藤さんにお伺いして驚いたのは、最初は特に飲食店を営むつもりはなかったというところでした。

 

自分が「できること」と「したいこと」を繋げた上での現在


齋藤さん、めっちゃかっこいいですね、「できる女感」がすごいです、すごい。かっけーっす。


あ、すいません、テンションが気持ち悪いです。


失礼しました。齋藤さんはなぜ穴水町へ移住されたんですか?


最初は全く移住を考えていなかったけど、能登地方での滞在時間が延びるうちに「住んでみてもいいかも」と思い、アクセスなどの面を考え、穴水町へ本格的に移住を考えたんです。

そして地域で事業を起こしている方を見て、地域に住んで何か自分にできることはないかと思いました。


最初から「〇〇を作る!」みたいな強い目的意識があったという訳ではないんですね。でもそこから飲食店の開業ってめっちゃすごくないですか?


田舎は都会と違って、仕事がありふれているわけではないんです。というか、待っていても何も起こらない。だから暮らしていく中で、徐々に目的がハッキリしてきました。

私は最初から飲食をはじめようと思っていたわけではなく、人が集まる交流場所を作りたいと思ったんです。
最初はカフェをオープンし、町の方の助言なども頂き、穴水町が能登牡蠣の産地だったことから、炭火焼きをはじめることになりました。

そうやって色んな方からの助言と後押しを頂いて今の形が出来上がっています。

飲食店というもの自体が「交流場所」をつくる為の方法だったんですね。

実際に穴水町に住んでみてなにか思ったことはありますか?


穴水町の方は割と「ハッキリさせる」ということを好みません。
これはなんとなくある町の雰囲気なんです、風習みたいな。
私は東京で働いていたときから、とにかく物事をハッキリさせながら仕事を進めていかないと嫌だったので、ガツガツいってたら、最初の方はうまくなじめませんでした。


都心部と地方で、やっぱり空気が違うんですね。


そうですね。ただ、最初はぶつかりながらもこうして4年という時間が経って、地元の方との関わりが増えてきて思うのは、本気でぶつかった人たちとは今も仕事ができているということ。自分がどんな人間で、相手がどんな人間なのか。そこでしっかり向き合ってお互いのことを少しでも理解できるように向き合っていれば、時間はかかりましたけど、とてもいい関係を築けたんじゃないかなって思ってます。

理解し合えないと諦めずにちゃんと向き合い続けた、ということですね。めっちゃ素敵だ…

 

「現状をどうにかする力」と「生きるセンス」

地方移住を考える方に、実際に移住してみた立場としてお伝えしたいことはありますか?


「生きるセンス」が磨かれます。
例えばさきほどの話みたいに、ハッキリものを言ってくれない相手からは「意図を汲み取る力」が、ない仕事を作るには「仕事を生み出す力」と「仕事を見つけてくる嗅覚」が必要だし、単純なところで言うと、海に潜ればどの辺りにサザエがいるのかも想像できるし、車で走ってても食べられる山菜を見分けられるようになりました。基本的に物や情報や人が溢れている訳ではないので、現状からどうにかする力が必要なんだと思います。

「生きるセンス」ってめっちゃいい言葉ですね!!確かに、お話を伺ってても、斎藤さんがすごくパワフルなのが伝わってきますし、仕事だけに限らず、全てにおいての力が底上げされそうな気がします。


ありがとうございます笑 
あ、あと、食で健康になれます。私自身もそうだったんですけど、なにかしらで心が病んでる方を見ていると、食生活が乱れてることが本当に多いんです。
コンビニでご飯を済ませていたり、加工食品ばかりを口にしていたら、それは体から心にも伝わっていくんだってことは身をもって感じました。

食事は本当に心にも関わってきますよね。斎藤さんがおっしゃることで、更に伝わってきます。お食事も本当においしかったです!ありがとうございます。

 

「夫婦で漁業と飲食業」齋藤さんご夫婦

夫の義己さんが義祥丸水産という牡蠣養殖業を、奥さんの祥江さんが、穫ってきた牡蠣をお出しする専門飲食店「コーストテーブル」を営んで、夫婦として生活を組み立てているご夫婦。

元は原宿でアパレル業をなさっていたという齋藤さん夫婦の地方移住は、ぼくが思っていた形とは違いました。

 

「いつか漁業がしたい」を今叶えた


ぼくの移住は正直、みなさんとはちょっと違うのかもしれません。地方移住をされる人は町に惚れたりされる方が多い印象ですが、ぼくは正直、穴水じゃなくてもよかったんです。

え、ではなぜこの土地で夫婦で自営業をスタートされたんですか?


ぼくと妻はもともと東京でアパレルをやってて、ぼくがテレビで見たマグロの一本釣りとかに影響されて、将来はこんな感じの生活したいな〜って思ったことがはじまりで、「老後にやるなら今やればいいじゃん!」ってことで、漁業をできるところを探し始めました。

おぉ!めっちゃ勢い!行動力ですね!


けど、漁業に関して調べても、どこかの漁業組合に入って雇用されるしか情報が見つからなくて、それは自分の実現したい生活と違ったので、実際に漁業を行なっている方にお話を伺いにいったんです。

そこで出会ったのが牡蠣養殖の方で、「雇用はできないけど、ノウハウは教える。船とか探すのは面倒みるから修理などは自分でお金を出してやりなさい」って感じではじまりました。

 

そうしてまず、ぼくが牡蠣の養殖をできるようになるまで、その方の元で勉強をさせてもらってました。そしたらその方が、「穴水に養殖をやりながら飲食店をやっているお店は1店舗しかなく少ないから飲食店もいい」と助言を頂きました。そうしてできたのがこのコーストテーブルです。

今こうしてめちゃくちゃ綺麗なお店でご夫婦で自営業をされていますが、最初の頃に困ったこととかはありませんでしたか?


今もそんなに楽じゃないですよ笑 でも、今よりも最初の1年は本当に地獄でした。食いぶちがないから、みんなが行かない冬の雷の日でも漁に出たりしていましたし。


あと、都会との生活のギャップに慣れるまでは本当に大変でした。飲みにいきたいと思っても近所にお店があるわけでもないし、夜中になると本当に真っ暗で静かなのも、都会の喧騒の中で生活していた私には本当に怖く感じました笑

それはちょっとわかる気がします笑 無音っていう「音」がありますよね。「キーン」みたいな


あ、それです笑 でも、今はもうこっちの静かな生活に慣れてしまったので、都会のあの生活には戻れないと思います。


今、この土地で自営業として生き抜いていくために何かされていることってあるんでしょうか?


ぼくはあくまで個人でやっている漁師なので、他の大きな漁船を持ってたり、水産会社と同じことをしてても勝てません。なので、大量でなくてもいいから高級魚をとってきて、個人のお店とかに直接卸したりしています。


なるほど。確かに大量に獲れないんだったらケースで売るとかって、企業と同じ戦い方だと単純に数で負けてしまうんですね。

地方移住で大切なのは「一人のキーパーソン」に出会うこと


都会からの地方移住生活について、考えることはありますか?


人一人の存在感が濃いな〜って思います。都会では隣に住んでいる人の名前を知らなかったりするかもしれないけど、地方に住んでいたら、町の人自体が少ないので、すぐに顔見知りになります。


あ、確かにぼくも東京での住まいで隣に住んでいる方の名前くらいはわかりますけど、正面の方の名前は知らなかったりします。


人と繋がっている感覚がイヤな方だと、地方移住は難しいんじゃないかなって思います。ぼくはそういったところも好きなので大丈夫なんですけどね。


地方移住をしたいという方に何かアドバイスできることとかもあったら是非教えて頂きたいです。ぼく自身がまさにそうなので。


ぼく自身の体験談になってしまうので、みんなに当てはまるかどうかはわからないのですが、「1人のキーパーソンに出会うこと」はすごく重要だと思います。地方に移住しても情報があまりないので、地域に密着している方のつながりで、ぼくは本当に助けて頂いたので。


なんでも自力でできる訳じゃないんですね。ぼくも、そういった方とお会いできるよう、まずは自分からどんどん行動していきます。


あと、これも実体験ベースなのですが、地方移住のいいところばかりが切り取られているな〜とは思います。もちろん、嘘ではないと思う。だけどメディアで取り上げられているのは1割くらいの一面であって、その背景には9の辛いことがあるのも事実だと思います。さっき話したみたいに、飲食店は車で移動しないと行けなかったり、食いぶちを探す為であればお休みなんて関係ない生活を送ったりします。これは農業も一緒です。

でも、まずは動いてみないとはじまらないから、実際の土地に足を運んでみたり、短期的にでもいいから、その土地の空気とかを知ってみることがなにより大切なことなんじゃないかと思います。

ぼくも今、こうして取材に来なかったら知れなかったことが本当に多いので、まさに実感しています。貴重なお話、ありがとうございました。

 

 

あ、あとすいません。

 

 


はい?

夫婦で地方移住して自営業って、彼女もいないぼくからしたら本当に憧れでしかないので、どうしたらそんな人生を手に入れられるのか教えてください。


お引き取り願います

Uターン 「メンルヘンベーカリー」渡嘉敷さん

親御さんの世代ではじめた穴水町唯一のパン屋さん「メルヘンベーカリー」の2代目店主。

20歳の頃からパン職人を目指し、一度穴水を離れる。長男の出産とともに穴水町に戻ることを決意。

 

「自分で稼ぐ力」の重要性

家業を継いだ渡嘉敷さんにこそお伺いできることかもしれないのですが、家業のように何か「帰る理由」を持たずに、地方移住をしたいという方に関して思うことはありますか?


仕事があって収入面に問題なく生きていけるのであれば、地方移住は成功するんじゃないですかね。


間違いなく大切なことですよね


地方の人は「地元には仕事がない」といって都会に出ていくくらいなので
、手に職を持っていたり、資格を持っていたり、場所を問わずに仕事ができる人じゃないと、ぼくは難しいんじゃないかなって。

確かに。都会から地方に来る人と、地方から都会に出る人の一番の認識の違いは「仕事のなさ」なのかもしれませんね


一人で生きていく上で最低限の収入で満足できるとかって方ならいいと思うんです。
ただ、夫婦でお子さんを連れてこられる方とかは、ここで就職先を見つけてって考えてたら、パートの仕事がほとんどです。
就職にしても、ドラッグストアの薬剤師さんとか、介護施設とか、土木系の企業とかですかね。
それも福利厚生がしっかりしているとかって訳じゃないし、役場とかじゃない限り安定した収入ってのは見込めないと思います。

 

率直にいうと、「自分で稼ぐ力」を持っていない人は移住してどうするのかなって思います。

 

仕事を探しに来るのではなく、自分でお金を生み出す力ということですよね…たしかに、都会と同じように仕事がありふれているという認識だと、ちょっと違うんですかね…


ただ、逆にそういった「生きていく力」がある方であれば、実際に自然豊かでスローライフってイメージはあっていると思います。実際に住んでて、すごくいい場所だなって思っています。

 

人が減っていく中でもお店を続けていく為に

 


今はどんどんこっちに住んでいる人も減っていっているので、このお店も、今まで通りのやり方では難しいのは見えているんです。なので、ホームページを作って外部に発信して、今は能登ワインのブドウで作った天然酵母を配合した商品の販売だったりにも力を入れていってます。

今までのやり方では、現状維持をすること自体が難しいんですね。地域に密着しているお店ほど、どんどんやり方を考えていかないと、お店を守っていけないというのはすごく大変そうですね…


正直、ここに実家のパン屋があったからここでやってるけど、何もない状態だったとしたら、ぼくはこの場所にお店は出さないです。田舎で趣味程度に細々と商売を続けていくことが目的であればいいのかもしれませんが。

実際に地方で商売をなさっている方からのリアルなお話を伺えたこと、本当に貴重な情報でした。ありがとうございました。

 

 


あ、すいません、最後に。
さっきいくつかパンを頂いたのですが、本当に美味しかったです。いちおう元板前なので魚とかはさばけるんですけど、ぼくをこの店に置いて頂けないでしょうか?


勘弁してください。

 

現地住民「オクルスカイ」 代表 村山さん

能登空港ができた2003年、能登地方に訪れた方が手土産になるものをと考え、当時栽培していたぶどうから「能登わいん」を開発。

重機メーカーから一転、農業のベンチャーとして事業を大きく拡大した。


村山さん、めっちゃかっこいいですね、村山さんみたいなパパになりたいです。


何しに来たんですか?


失礼しました。真面目に取材させてください。

 

求められるものを求めて

お店、めちゃくちゃオシャレですね…お店の建物自体もすごく新しいし。どんどん新しいことに挑戦している感じですか?


ぼくは大学進学のときに大阪へ出たんです。実家が建設業だったことから土木の専攻で通っていたのですが、能登空港ができることを知って、大学を辞めて穴水に戻って数年仕事を覚える為に働いてから起業しました。26歳のときですね。

当時、まず能登空港の建設に合わせて、能登に訪れた人がお土産に持ち帰ることができるものは何かと考えました。

もともと実家の経営が建築の重機なども扱っていたので、機械化が可能なぶどう農園をはじめました。


建築から農園ですか!


それで、家業の建設業とぶどう農園を兼業していたんですけど、そのままぶどう一本に絞っていった形です。なので、「これだ!」って思ったわけじゃなくて、自分ができることに対して何が求められているのかを考えていったら今の形にたどり着きました。


(すっげぇ…)ほんとに機会を探っていった感じなんですね。


そうですね、正直ノリは軽かったと思います。「こっちの方がうまくいくかな〜みたいな」笑 元々の家業が公共事業の仕事を頂いていることも多かったので、仕事をいただくことはできてたんです。ただ、昔からの地元で力のある実力者の方々があんまり認めてくれなかったので、「面白くないな〜」って思って「なんかいっちょ自分の力で始めてみるか!」くらいの笑


いや、当然ながら色々と大変だったと思うんですけど、それをサラッと言えちゃうの、めっちゃすごいと思います…


いえいえ笑 それでそのぶどうを使ってワイン事業を始めて、ちょっとずつ地元の中でワインが流通するようになってきたんです。で、ふつうに街中の居酒屋で飲んでたときに隣にいた人がワインをほめてくれてて、当時少しずつワインについても勉強し始めてたからやってみようかなって。


きっかけは需要のあるところから探っていったんですね。


そうですね。だから、ここに「田舎で農業がしたくて!」って訪ねてきてくれる方もいらっしゃるけど、「食べていけないと続かないよ」ってことはちゃんと伝えます。
ぼくはある程度、生活が回せる状態で農業にも挑戦できたから、どれくらいお金がかかるものなのかもわかってるから、簡単にはオススメできないです。

 

力になれる部分と支えられない部分


地方移住について感じることはありますか?


さっき言ってた通り、実際に地方移住をして食べていくことができるのか。例えば地方で農業をしたかったとしても、作物にもよりますが、ただ単純に農業をやっているだけではとてもじゃないけど食べてはいけません。なので、そのための方法はきちんと考えなければいけないと思います。

実際に仕事としてやっていけるのかということを考えている村山さんだからこその言葉ですね。


あとは、個人的な印象なんですけど、農家をやりたいって言って来てくれる方でも、そもそも移住することに関して、人には簡単に口にできないような「事情」を抱えている人が多いんじゃないかなって思います。


あ、確かに…都会を離れたいって方は、少なくとも都会での現在の生活を変えたい方ですもんね。


そこの問題は自分で解決するしかないし、起業した立場として事業的なアドバイスや相談にのることはできるけど、そんな人として立派な相談相手になれる訳じゃないから、訪ねてくれる方のお話はできる限りは聞いてあげるし、相談にも乗る。
体験してみたいといてば手伝いもさせてあげるけど、ほとんどの方がやってみると「やっぱり大変だ〜」って言ってる印象があります。


地方に行くことで、確かに時間の流れ方みたいなものはゆっくりだし、自然もあるから、本当に素敵だと思います。でも、大変な面を考えないのはちょっと危ない印象がありますね…


だからといって特に拒否をする訳じゃないんです。ただ、地方での生活ってなれるまでにはやっぱり時間もかかるから、一度移住を体験してみるってのは大切なんじゃないかなって思います。


まずは知ってみること、なんですね。


ここにも地方移住の就職先として、一番多かった一昨年とかは年間40人くらいの方から問い合わせを受けました。でも、実際に受け入れたのは5人です。
歳や性別、地元の人なのか県外の人なのかとかってのは正直なんでもよくて。


ちゃんと各々で「自分の実現したい生活」という目標がしっかりしている。ということですか。

はい。これからどんな生活を実現していきたいのか、それの為にここでどういったことを吸収して、何を仕事にしていくのか、ちゃんと聞いています。そして現実も話します。

そこまでお話してでもやっぱりやりたいって残ってくれてるのが、今ここに働いてるスタッフの方です。


すごい。ちゃんとスタッフの働いた先までのことを考えてくれる会社ってそんなに多くないんじゃないかと思います。そうやって移住のきっかけをつかむ方が増えたら、移住者の定住も増えるのかもしれませんね。


あくまできっかけはきっかけで、あとは合うか合わないかなんじゃないかなって思ってますね。何回も来てる人もいるくらいですし。自分たちが生きていきたいスタイルがそこで実現できるんならそれでいいんじゃないかなって思ってます。


地域おこし協力隊の方もおっしゃってました。「きっかけ」をどう自分のものにできるのか。そこからは自分の行動次第ですもんね。


そうですね。ただ、自分の子供たちに選んでもらえるような「地元」ではありたいな〜と思ってます。だからこそ、今自分がやってる仕事は元々この地方になかった仕事だから、しっかり食べていけるように回していかなきゃな〜と。そういう意味では戦ってます。


めっちゃ素敵です。帰ってきたい場所であるために環境を残してあげられたら、嬉しいですよね。


今はこうしてなんとか食っていけてるけど、この事業を始めた当時はやっぱり周りに大反対されたし、建築からぶどうを仕事一本にしたときはちょっとやばいかなって思ってた笑 家業を継いでほしいとは思っていませんが、やりたいなーと思ったことに挑戦できる環境は残してあげたいです。


挑戦できる環境が地元に残っているという状態を上の世代の方が残してくれるって、本当にありがたいことですね…貴重なお話、ありがとうございました。

 

お土産として販売している自家製ジャム。ロカフレの経費でお土産に包んでいただきました。

 

 

「穴水町政策調整課 まち・ひと・しごと創世推進室」係長 黒田 篤史さん

写真左が黒田さん。4月より地方創生事業の担当係長として就任。移住者が住居を構える際に補助金の用意をしたり、土地の無償分譲をしたりと、地方移住希望者が実際に穴水町への移住を検討している際に、行政として全体的なサポートを行ってらっしゃいます。


ひげちょんまげが失礼します


はい、どうぞお掛けください。


(割と対応優しいな…)

 

地域おこしに必要な「雇用と人のバランス」

行政の方に聞いてみたかったのですが、シンプルに人と雇用を増やすということを考えるなら、大型ショッピングモールみたいなものを作ってしまえばいいんじゃないですか?


そうですね、求人だけを生み出せば良い訳でも、移住者だけが増えれば良い訳でもない。同時じゃないとバランスが取れないんです。


同時ですか?


そう、同時です。仮にショッピングセンターを作るとします。その時点で、そのショッピングモールで働いてくれる人がいなければいけないから、求人が生まれますよね。でも、ショッピングモールができるからという理由で移住してくる人はいないので、求人は町に現在住んでいる人から行うことになります。


たしかに


でも、田舎には仕事がないといいつつも、現在住んでいる方は実際に何かの仕事をして毎日を過ごしているので、いきなりたくさんの求人が生まれても、そこに対応できる人がいないんです。


なるほど。だから同時じゃないといけないんですね。


そうです。実際にあるお話なのですが、ある地方で大型のショッピングセンターができて、1万2千人の求人が生まれたけど、仕事についていない人がいきなり1万2千人も集まらないし、その為に移住してくれる訳でもないので、機能しなかった。結果的に、オープンしたショッピングモールには最初から空き店舗ができてしまったという話もあります。


それは維持していく上で最初からかなり厳しい状態ですね…じゃあ、単純に雇用と移住を増やすとしたら、大企業とかが、出張所を作ったりして、ある程度の社員さんと共に移住してくれる形とかじゃないと難しいんですね。


そうですね、そういった話があれば、コンビニが必要になったり、色々な需要が生まれてくるので、手っ取り早く経済が循環する仕組みは出来上がると思います。


全然簡単な話じゃないんですね…


そういったことも含めて、まずは穴水町自体が「魅力ある町」になる必要があります。

そこで私たち行政にできることは「穴水町に住みたい!」と検討してくださっている方、気になっているがあと一歩を踏み出そうか考えている時に、助成金やサポートによって「不安」を少しずつ解消してあげること。ただ、私たちは昔から住んでいる人間なので、正直周りとの比較ができません。なので、実際に移住してくださった方々とお話をしながら、穴水の魅力を伝えていきたいと思っています。


移住したいと思っても、引っ越しそのものにもお金がかかるし、ぼくの場合はおそらく仕事も個人で起業するつもりなので、結構不安定な感じで活動していくと思うんです。でも行政の規模で受け入れの体制を作ってくれているのであれば、すごく最初のとっかかりのハードルが下がるので、気持ちが楽になりました。


そう言って頂ければなによりです。穴水町で心よりお待ちしています。

 

埋まらない空き家、その理由。


穴水町には空き家も多くあるとお伺いしたのですが、空き家への移住者受け入れについてはどんな考えをお持ちでしょうか?


単純に空き家があるかないかで言えば、あります。ただ、そこもずっと放置されている状態になっています。


新しくアパートやマンションを作るよりは、空き家を賃貸として借りられた方が手っ取り早い気がするのですが、そういった活動は行わないんですか?


確かに一から作るのは大変かもしれませんが、古くなった空き家の修繕はかなりの費用がかかります。空き家になってから、すぐに他の人に貸し出せば問題ないのかもしれませんが、数年経った後だと、水漏れがしてしまったり、壁紙が剥がれたりと、大きな修繕が必要になることが多いので、結果的にはかかる費用がかなり大きくなることが多いんです。


既に古いものを現状維持する為に修繕するより、いちから頑丈な新しいものを作った方が長期的に見れば安心、ということですね。


はい、あと実際に貸し出しているところももちろんありますが、持ち主の方の腰が重いのも事実です。


あ、そうなんですね。ただ空き家にして傷んでくるのを待っているだけなら、誰かに貸して、ちょっとでも利益が出た方が、所有者としてもメリットがある気がするのですが、なぜなのでしょうか?


たしかに、「ただの空き物件」として見てしまえば確かに貸し出せばいいのかもしれませんが、空き家の多くが、昔の実家だったり、自分の親世代が住んでいた家だったりするので、深い思い入れがあります。

また、家具や仏壇なども住んでいた当時のままにしてあったりと、まず他の人が入れるようにする為にも多くの費用と労働力が必要になります。そこまでして、いきなり知らない人に思い出深い家を貸したいという方は正直少ないです。もしそれで大切にしてくれない人に貸し出したら辛い思いをするので。


そのお話を聞くと、確かに理解できます。自分が生まれ育った実家が、大切に使ってくれるかもわからない人に使われるのってなんだか不安ですもんね。


あと、移住者に貸し出すということは、近所の方にも知れ渡るので、仮にその町に馴染めないような方が入居した場合「その人に家を貸している人」という立場になったりすることもあるので、難しいところだと思います。


わ、それは辛いですね。でも、仮に家を貸している人が何か問題を起こしたら、貸している人が無関係とは言えませんもんね…


はい、なので穴水町としての取り組みでは、空き家バンクを設けていますが、平行して土地を無償で分譲したりしています。
今年の時点で、用意した土地は8区画6区画が確定し、平成29年度には、さらに6区画追加を追加する予定です。そうやって地道に「この町に住みたい」と思ってくださる方にとって移住しやすい環境を整えていきたいと思っています。


すごく勉強になりました。ありがとうございます。

 

こんなひげちょんまげで真っ青なやつが役場に「取材です」なんて言ってきたらさっさと跳ね返されるかと思ったのですが、とても優しく対応して頂けました。ぼくだったら間違いなく断ります。

また、どういった言い方が失礼のない言葉なのかわかりませんが、正直、これがもっともっと大きな町の役場だったりしたら、こうして直接町おこしについてのお話を役場の偉い方にお伺いしたり、自分の思うことをお伝えすることはできないと思うので、そういったところも地方のひとつの魅力なんだと思います。

 

穴水町を出て東京へ 「理容師」白藤淳志さん

最後にお話を伺ったのは、高校を卒業し、上京してから理容師の仕事をしている白藤さん。

地方に移住した方、実際に住んでいる方だけではなく、穴水という町を出た方にもお話を伺う必要があると思い、取材の協力をお願いしました。

また、ライターぼりの頭をかれこれ何年も刈り上げ続けてくれている友人でもあります。

近い内、石川県には帰るつもりではあるが、穴水ではなく金沢に移住を考えているそう。

これもUターンには入るのですが、地方移住の形としては地方都市への移住を検討しているという形です。

 

家業を継がずに、近隣地方都市で商売をするという選択


じゅんちゃんごめん、人の頭わしゃわしゃして遊ぶのやめて?

あー、もうちょっとだけ遊ばせて。


(諦め)じゅんちゃんは穴水には帰らないんだね。家業もあるんでしょ?


そやね〜、あそこで商売するの大変やし、それやったら金沢(石川県の県庁所在地)で働きたいなって思う。穴水よりは仕事あるやろうし。


ずっと東京って訳ではないんだ?


うん、両親もいずれ歳とってくるから、なんかあったときにはすぐに駆けつけられるようにしたいとは思ってる。


あーそれは俺も考える。親には「自分の為に息子が選びたい将来を我慢して地元に戻ったっていうのは、嬉しい気持ちもあるけど、息子の可能性を奪ってしまう親にはなりたくない」って言われてる。だから、自由に挑戦はしてるけどやっぱり気になるよね。

じゅんちゃんから見た穴水ってどんなとこなん?


やっぱり地元やから帰ったら落ち着くし、好きな土地やよ。で、既に家業があるから開業資金もかからんけど、それでもやっぱりどんどん人が減っていってる土地で商売する度胸は正直ないかな


リアルな意見、ありがとう。これからもよろしくね。

 

穴水町を巡って感じた地方移住のリアル

目標がないと続かないという太田さん

地震というきっかけを元に、育った街を盛り上げたいという戸田さん

決め切った目標は掲げず、できることを形にしてきた斎藤さん

全国を見て、最終的には関わる「人」で移住を決めた中川さん

漁業をしたいという目標から、たまたまこの地にたどり着いた斎藤さん夫婦

実現したい生活のために「食っていく方法」がわかっているのであれば最高の場所という渡嘉敷さん

しっかり食べていける仕事を次世代に残したい村山さん

住みたいと思って頂けた方の手助けになりたいという役場の黒田さん

たまに帰省する場所として地元と関わっていくと決めた理容師の白藤さん

これから地方に踏み込むことに意気込むぼく

 

全ての人が都会だから、田舎だからではなく「今、ここに生きる人」として自分のできること、やるべきことを常に模索している。

 

「地方の魅力」はきっとたくさんあるんだけど、改めて場所とは人のことなんだと感じました。

 

そしてメディアの取り上げる「地方移住でスローライフを実現しよう」という風潮。それはぼくがまだ東京に住んだことがなかったときに、ドラマで都会の生活を見て、「東京に行けばなにかを実現できる」と思っていた「お上りさん」の感覚に近いんじゃないかなって思うんです。

それが悪い訳じゃない。いろんな人の考えがあっていいし、そもそも良いも悪いもない。

ただ、いろんな方の思いがあるという事を知ることができて本当によかった。

 

都会にも田舎にも間違いなく「いいところ」はある。

 

だけど、そのほんの一部の「いいところ」しか切り取られて発信されないが為に「思っていたのと違った」ということが続出するのだと思います。

メディアに取り上げられるのはあくまでほんの一面。残りのリアルな取り上げにくい部分にはまだまだスポットは当てられていないのが現実、と知りました。もちろん、この記事も「全て」ではありません。

でも、現地で実際に住んでいる方に伺ったお話であり、ひとつの「リアル」です。

 

地方移住、都会進出、全てまずは「自己実現」に向けて

正直、正解はないのかもしれません。

ただ、「自らが考えて動かなければいけない」というのは、お話を伺った全ての方から色んな角度で伝わってきました。

都会で山積みの仕事を終電ギリギリに終わらせてクタクタになって帰るのはとても辛いと思います。

だからといって「田舎が楽」というのはあまりにも安直すぎる。それは「都会にはなんでもある」みたいに一言で括ってしまっているのと一緒なんだなって。

 

「田舎でスローライフ」、確かにそれは一つの素敵な夢であり、実際に生活されている方はそこに大きな魅力を感じてその町に住んでいます。

だけど、スローライフを実現する為に、数ある不自由と直面して、自分なりに理想を形にするための行動を起こしていかないと、本当の意味での「田舎でスローライフ」は手に入れられない。

 

だからこそ、「自分がどうありたいのか」を考え直すいい機会になりました。

 

 

今回、この記事は地方移住を実際に考える「ぼく」にとって必要だった情報を取材し、書き起こしました。

「こんな情報がほしかった」を実際の地方移住希望者が書いた記事です。

 

この記事が、一人でも多くの地方移住を望む方にとっての、今後の参考になれば幸いです。