洗脳研修!ゲイビデオ出演疑惑!新卒で入った会社を14日で退社してきた(後編)

前編はこちら

 

僕「私は!この会社を!!!!辞めます!!!!!」

 

この宣言をした時、その場にいる全員が固まりました。

 

5秒間、僕も含めて誰も身動きを取れませんでした。

本当に文字通り固まっているのです。

 

キーンという耳鳴りのようなものを感じるくらい一気に室内が静まり返り、

後ろでメモを取るためにペンを持ち直そうとした上司も、その動きを止めてこちらを見ていました。

 

 

 

「どういうことや」

 

口を開いたのはそれまで前で怒鳴っていた課長でした。

これまでとは打って変わって低く重い声でした。

 

僕は一歩課長の方へ詰め寄り

 

 

 

「今は、心からの声を、本心を話す時間ですよね?….

 

 

そういうことです….」

 

 

 

同じく低い声で返しました。

 

お互いがお互いの目を見ながらまた少しの沈黙。

 

課長の目からは動揺と怒りの感情が読み取れました。

その証拠に僕の視界の端に課長の左手が写っていましたが、その握りこぶしがプルプルと震えていました。

 

その隣に立っていた上司は

それまでこのような怒号をあげていたんですが..

このときは少し下を向いて、黙り、まばたきの回数も多くなっていました。

 

今だ!と思ってもう半歩近づきます。

僕もそうやって場の雰囲気や相手のペースに飲まれないように必死に駆け引きをしています。

 

 

そして僕は「また、あとで、ゆっくりお話できませんか?」と語りかけるように話そうとしましたが、

 

「なんで、この研修が始まる前に言わなかったんだ!」

 

 

僕の話を遮るようにそう返されました。

 

僕は何も言わずに相手の目をじっと見ています。

 

「君が我々になんて言われたか覚えてるか?」

 

物音一つたてれない緊張感の中、課長の、その低く重い声が部屋の中に反響しています。

 

 

「君はナルシストだ…..

 

……..席にもどれ。」

 

 

「はい」

 

 

席についてこう思いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やっべー今かっこつけてたのバレてた!!!!

 

だってわざわざみんなの前で宣言する必要なんてないじゃん

でも、みんな空気に飲まれてる中で一人だけ「辞めます!」って宣言できる奴いたらなんかかっこよくない?

課長の目を見てゆっくり低い声で話してたのは「何事にも動じないかっこいい俺」を演出してただけだし、

半歩近づいたときも、精神的に向こうに圧力をかけたかったからやっただけで、友達と歩いてて街で怖い人に絡まれたら、俺すぐにその友達より3歩後ろに下がるから!!!

「研修が始まる前になんで言わなかったんだ?」って言われて何も言わずに相手の目を見続ける場面あったけど、あれ図星で言い返せなくって黙ってただけだけ!

恥ずかしい恥ずかしい!!穴があったら入りたい!!!(本当は穴とかじゃなくてホワイト企業があったらそこに入りたいです。)

 

 

で、この恥ずかしさを表に出してしまうとかっこ悪いのでクールな表情で座っているとサイコパス斎藤くんの番がやってきて、

彼も「辞めます」と宣言してました

 

 

 

 

 

辞めると宣言した斎藤くん

彼の決意は朝に聞いていたので驚きませんでした。

彼は前の晩に、親に泣きながら電話したそうです。

 

彼は以前「死にたい。殺してくれ。」と言っていましたがもう限界だったのでしょう。

いろんな想いが溢れて、最後に頼れる人として親に電話したんだと思います。

そこで、辞めることを決めたようです。

 

この日の彼は今までとは全く違いました。

まずは、同期のみんなに朝から感謝の言葉を言っていたこと。彼のキャラにないのにそんなことをやってました。

 

そして、なんというか、研修を受ける態度がめちゃくちゃ悪いんです。

これには上司もブチ切れて「斎藤ぉぉぉぉっっ!」と怒鳴られていました。

 

彼は死ぬことを本気で考えた結果、達観してしまったのだと思います。

 

「死ぬよりマシだ」と。

 

彼は後で呼び出されたときに「価値観が合わない」とスパッと言い切って、すぐに判子を押し、帰っていきました。

捨て台詞のつもりなのかこの会社の禁句も吐いていきました。本人は禁句を吐いたことに対し「あ、間違えた!すみません!」と言っていましたがあれは絶対にわざとです。

 

達観して、より、サイコパスに磨きがかかっていましたね。

一方僕は後で呼び出されて、めんどくさいことが起こったため彼よりも遅く帰されました。

何故かと言うと

 

僕がゲイビデオに出演していると思われたからです。

 

 

 

 

 

なぜ、ゲイビデオ出演疑惑が浮上したのか

クソみたいな研修だったとは言え、こんなにクソな僕を採用して、時間やお金を使ってもらったのは事実なので、

呼び出されたときに、辞めるにあたっては様々なことを正直に真摯に話そうとは思っていました。

 

しかし、嘘は付かないにしても話せないこともあります。

 

もうこの会社の人間になるということ自体が恥だということもそうですが

 

僕がブロガー・ライターだということもそうです。

 

過去に、顔見知りにブログやライター業がバレて、書きたいことが書けなくなったことがあります。

一人にバレると噂はどんどん広がっていって、さらに書けることの幅が狭くなってしまいました。

 

あと、結構嫌なんです。「普段はあんな感じなのにインターネットではこんな感じなんだ」って思われるのが。

恥ずかしいじゃないですか。

 

で、上司との話の中で

会社に入る前からお仕事のようなものをさせてもらってて一定の収入は得ている。下手したらここでもらえる給料を超える。だから尚更こんなところで働くのが馬鹿馬鹿しい。

という事実を話したときにこう言われました。

 

「どんな仕事?」と。

 

僕は「こんなところで働くのが馬鹿馬鹿しい」と言ったことに対してもう少し反応があるかと思ってましたが、苦笑されるだけで上司の関心は僕の副業についてでした。

 

僕は本当に上司に知られたくなかったので「話せません。」と答えましたが

「それでは納得いかない。話せる範囲で話して。話せない理由を教えて」と返されてしましました。

 

話せませんと言ってるのにこんなに聞くかねと思いながらも

 

僕は話せる範囲で話してみました。

 

 

僕「人に知られると恥ずかしいので詳しくは本当に話せないんです。」

 

上司「恥ずかしい仕事?どれくらいもらってたの?」

 

僕「え….まあ….一本あたり数万です。」(ライター業は記事一本あたり数万の報酬がある)

 

上司「一本数万!?今後も続けていくのか?」

 

僕「はい。」

 

上司「本当に君自身はそれでいいのか?」

 

僕「この仕事が好きですから。」

 

上司「好きでやってて….恥ずかしい仕事….?」

 

疑問と不快感が入り交じったような初めて見るような人の表情でした。

 

 

上司「えっと…モデル的なそういうの?」

 

僕「(なわけないだろ…あ….でも…)うーーーーん….」(記事でカメラマンに写真は撮られるけどなあ….)

 

僕「あれは….モデルではないですかね。」

 

上司「そうか…え…親は知ってるの?」

 

僕「はい。」

 

上司「親はなんて言ってるの」

 

僕「『へー』と。」

 

上司「え…」

 

僕「両親も具体的にどんなことをやってるかあまり知らないんです。結構体張ってて見せたくないので、一切見せてないんです。」

 

『くまモンに見られる度にくまモン化する帰省の旅(近日公開)』より

 

上司「わ、わかった…社長にも報告しておく」

 

僕「あ!すみません!むやみにこのことを人に言ったり、僕のことを調べ上げたりするのは本当に困ります!お願いします!」(僕の名前で検索されると僕の記事が出てくる可能性がある)

 

上司「わかってるよ。まあ、頑張れよ。」

 

 

 

 

そういって上司は部屋を出ていきました。

この後、別の上司(めっちゃいい人)とも面談しました。

 

 

 

上司「もっと視野を広く持ったほうがいい。目先のお金じゃなくてもっと将来のことを。私の子供が君と同じことやってたらと思うとやっぱり親としては『うーん』と思うよ。一日二日で数万稼げる仕事って言ったら大体想像はもうついてる。いつから…なんというか…ハマったの?」

 

僕「去年の夏です。」(去年の夏からブログを始めた。)

 

上司「(ため息)」

 

僕「すみません。」

 

上司「前代未聞よ。あの場であんなこと言うなんて。ただ、ある意味、度胸はあるしそういった意味ではやっていけると思う…ほんと今は…いろんな世界があるんだねー….」

 

僕「そうですねぇ」(霊とデートしてお金もらえるとか以前では考えられなかった。)

霊とのデートにおすすめ!小豆島の観光スポット4選

 

上司「でもやっぱり私は◯*?+△….」

 

 

 

 

このときなんとなく、これまでの会話に違和感を感じました。

 

「『想像ついてる』って言ってたけどライター業って普通想像つくかなあ」と。

 

面談した二人は何を想像しているんだろうと考えました。

 

 

 

僕が話した情報は

 

  • 「一本数万」
  • 「人に言えない恥ずかしい仕事」
  • 「働いてるところを家族に見られたくない」
  • 「体張った仕事」
  • 「検索されたくない」

です。

 

これまでの会話も振り返って気づきました。

 

あれ?俺ゲイビデオ男優だと思われてない?

 

もし僕がゲイビデオに出演していると思われているのであれば、上司が異様に僕の将来をめちゃくちゃ気遣ってくれたのも、モデル?と聞いた遠回しな上司の表現も納得できます。(余談ですが実際に僕は男性にモテます。)

 

 

 

 

上司「…◯*?+△だから私は君にそういうことをしてほしくないというのが本心かな」

 

僕「(違う!!!俺はゲイビデオに出演してない!)」

 

 

誤解を解きたかったので上司の予想からゲイビデオを遠ざけるためのヒントを出しました。

 

「研修中もそのことを考えてしまうくらい本当にそのお仕事が好きで、実際に毎日、研修が終わった後もその仕事やってたんですよ。」

 

「小学校の卒業文集に書いた夢(小説家)にも結構近いんですよ!」

 

僕はライター業であることがバレない程度ですが話しました。

その時僕は思わず、誇らしげに、嬉しそうに話してしまってましたね。

 

しかし今、冷静になって考えてみれば、

それらの情報は「僕がゲイビデオに出演している」と思い込んでいる上司にとっては混乱させるだけのものでした。

 

上司からすれば「え、普段からゲイビデオのことばかり考えてて、研修おわりにはゲイビデオの撮影に行ってる!!!???」

「小学校の卒業文集にゲイビデオ男優!!!???」となってしまいます。

 

 

僕はもどかしくなって「僕の副業はゲイビデオ男優じゃないです!!」と言いたい気持ちに駆られました。

 

しかし、「じゃあ何やってるの?」と返されると面倒なので諦めました。

 

上司にライターであることがバレて文字を書けなくなるくらいなら、誤解されてたほうがまだマシです。

 

 

 

結局、価値観が合わないと言い放ってスパッと辞めた斎藤くんよりは長くなってしまいましたが、

結果的には「いろいろと大変なんだね」と同情されスムーズに辞めることはできました。

おそらく僕は社内で会社を2週間で辞めた新卒ゲイビデオ男優として語り継がれていくことになるでしょう。

 

 

 

昼休み中の同期がいる部屋に荷物を取りに戻りました。

「前田くん!戻ってきたの!!」と女の子が嬉しそうに声をかけてくれましたが、

僕が「ううん、辞めるよ」と気まずい感じで微笑んで見せるとその子は黙って俯いてしまいました。

同期もみんな気まずそうに昼食を取っています。

僕はそそくさとその部屋を出ました。

 

同期と話したりするのはこれが最後でした。

以降、同期と連絡を取るのを禁止されたからです。

 

そして、僕は『入社辞退書』に印鑑を押して会社を去りました。

 

 

 

家族や恋人、友人に話した結果

辞めたはいいもののそのことを、まずはじめに報告しなければいけない人がいました。

 

家族や恋人です。

 

正直話したくありませんでした。

迷惑をかけたり、怒られると思ってました。

 

ずっと黙っていようかなとも考えたぐらいです。

ただ、やっぱりそこはちゃんと言わないとなと思ってまず、母にメッセージを送りました。

 

送ったのは結構暗い文面です。母には就職するにあたって色々と迷惑をかけていて本当に申し訳なくて、返信を見るのも怖かったです。

 

しかし、母は強かったです。

 

妹から聞いた話ですが、僕からのメッセージを見た瞬間に妹に僕の暗い文面を見せて爆笑していたようです。

そんな母からの返信は「了解!気をつけて帰ってきてね〜」でした。

 

 

 

 

母から父にも連絡が行ったようで父からもメッセージが届きました。

父は体育教師で生徒指導とかもやってる人です。「それくらいの研修で..根性が足りん!」と怒られるのも覚悟していましたがメッセージには

 

「行動力があって安心した!さすがは俺の息子!人生なんてこのくらいが面白い!( ̄ー ̄)」と書かれていました。

 

 

 

長く付き合っている僕の彼女からは「そっかそっか!失業したことでまた、武器が増えたね!これから大変だろうけどサポートするよ!」と返ってきました。

そういえば僕が学生時代、先に社会人として働いていた彼女に「会社のことでなにかあったら言ってね!サポートするから!」と学生のくせに偉そうにそんなことを言ったことがあります。

 

まさか、それを同じように返されるとは思いませんでした。

 

 

 

友人には、研修の内容や会社のことに触れずに「会社辞めた」とだけ伝えました。

本当にそれだけしか伝えなかったのですが、なぜか「かっこいい!」と返ってきました。

彼はゼミが同じで夜遅くまで一緒に研究してました。当時、研究に没頭しすぎて家に帰るのは基本的に23時でした。

そうやって一緒にやってきたからこそ何となく「僕がなぜ、何を思って辞めたのか」も察してくれたのかもしれません。

 

 

このように僕は過剰なくらい周囲の人に恵まれていました。その人達のおかけで今は立ち直れています。

 

 

社長も言っていたこと

 

「親や恋人友人にもっと感謝しよう」

 

僕は心からそう思いました。

 

皮肉にも社長が一日目に言っていたことと同じです

 

いろいろな人との連絡を一通り終えたとき

 

今では当たり前になったことを、もう一度、感謝し直してみたいとクズの僕らしくないことを思いました。

そして、今回の連絡一つとってもありがたいなと思えました。

 

帰る家があるって実はありがたいこと。

働いている恋人が平日の昼間に返信をくれるって実はありがたいこと。

学校卒業してからも友人と連絡がとりあえてるって実はありがたいこと。

 

僕は、ありがたいことを拍子抜けするくらい当たり前のようにやってくれている人がいること、

そしてまだまだ、その恩を返したり、感謝を伝えきれていないことにやっと気づけました。

 

 

 

ビールを飲みながら話したこと

親しい人に連絡を終えて、斎藤くんと合流することにしました。

 

まだ、昼でしたが二人で京都駅でビールを飲みました。

 

「スーツ着て昼間からビール飲むとか最低だな」

 

そういって笑い合いながら僕は彼の野望も聞きました。

ゲストハウスを作りたいらしいです。

 

彼はクソみたいな英語力のくせにユーラシア大陸を横断した経験があり、現地でのめちゃくちゃなトラブルを乗り越えるタフさもあります。そんな彼なら、すぐ作ってしまいそうだなあと思いました。彼がスイッチさえ入れば誰よりもデキる奴だというのは研修中に分かったことです。彼は旅好きの賢いサイコパスです。

 

 

 

「お前がいてよかったわ。お前がいなかったら今頃こうやってビールも飲んでない」

 

斎藤くんがふとそんなことを言い出しました。

 

「俺もだよ」

 

僕も彼がいなければ、カッコつける相手がいませんでした。

 

「で、どうだったカッコよかった?」

 

「前に立ってるときは『動じない俺』感が出てたけど席につく前に副リーダーにポロっと言った『あとは…任せたよ…』あれは正直カッコよかった!」

 

「でしょ!!」

 

わざとこんな馬鹿な会話もしました。

 

 

 

こうでもしないと斎藤くんが悲しい顔を見せるからです。

 

 

 

その度に僕も

「そんな顔するなよマイナスになったわけじゃない。今、マイナスからゼロになったんだよ!まあ…本当に『ゼロ』なんだけどね(笑)」と励ましたりもしていたのですが、

 

 

この日数回目の悲しい顔はそれまでの顔とは少し違っていました。

 

 

「なあ…この録音どうする?」

斎藤くんがぼそっと聞いてきました。

 

この録音は朝から斎藤くんにも頼まれていました。

そして、後でそのデータを渡す約束もしていたのでデータも渡しました。

 

「前田は記事にするの?社名と一緒に公開するの?」

研修中の日曜日、彼とご飯を食べたときに、彼にだけは僕がブログ・ライターをやっていることを教えていました。

 

 

「最初にいきなりネットで社名を公開して炎上させるのは順序として違うかもなあ」と答えました。

この記事では社名は公開しないようにしています。

 

 

 

それを聞いて斎藤くんはさっきまで見せていた悲しい顔とは打って変わって「俺は会社ぶっ壊したいわあ(笑)」と笑っていました。

 

 

 

 

今、データは僕と斎藤くんの手元にあります。

 

 

 

 

ブラック企業を辞めて最初に撮った写真

 

二人で店出て、斎藤くんがこう言いました。

 

 

「今からどこいこうか」

 

何気ない言葉ですが今の僕達が言うと重みがあります。

 

「広い公園あるからそこ行こっか」

 

「おーいいね」

 

 

ワンポイントメモ

ブラック企業を辞めた人を連れて行くのに最も適した場所は「広めの公園」

 

 

やってきたのはここ京都・梅小路公園です。

 

 

「自由を手に入れた俺たちにぴったりだな」

 

皮肉っぽく斎藤くんが言いました。

 

僕たちはスーツを脱ぎ捨てて大の字になって寝転びました。

※嘘です。本当は脱いだスーツをきれいに畳んで、Iの字になって寝転びました。写ってるのは斎藤くん。

 

 

そして寝転んで撮った写真、それが失業して初めて撮った写真になりました。

こちらです。

 

こんな事書くのなんか恥ずかしいですが、

 

空の青さに気づきました

 

空とか、芝とか、子どもたちが遊んでいる姿とか….全部が違って見えました。

 

ワンポイントメモ

ブラック企業を辞めた人間が一番最初に撮る写真は「空」

 

 

スーツを脱いで二人で寝転がって空を見ているときに「今の俺ら完全に失業してるよね。」と斎藤くんがポロッと言ってたのが面白かったです。

 

結局日が落ちるまで公園でぼーっとして

 

「そろそろ行こう…次どこ行く?」となったときに

 

斎藤くんに「ハロワ」とキツイ失業者ジョークを返されましたが、

 

この日は疲れたので斎藤くんの家に行って僕は泊めてもらうことになりました。

 

 

 

2人の本棚

斎藤くんの家に着いて、僕はまず、「スマホ充電していい?」と聞きました。

 

「失業者が失業者の家で充電するな!この失業者が!」と言われましたが充電はさせてくれました。

 

部屋の中を見渡すと、本棚に僕達の働くはずだった業界のことについて書かれた本が並んでいるのが目に入ってきました。

 

「(斎藤くんもこの会社の仕事がやりたくて入ったんだ…)」

 

僕の家の本棚にも同じような本が並んでいます。

僕達が入った会社で取り扱っている業務の内容は特殊でした。

僕も、斎藤くんもそれがやりたくて入社しました。他にそれができる会社はありません。

 

おそらく、あの研修を受けてやめようと思わなかった同期は、ここ以外にないという理由でしがみつき続けたのでしょう。

僕も本当はこの会社の仕事をやりたかったです。でも恥ずかしくなりました。この会社の人間になることが。

 

 

「その本、俺も読んだことあるよ」

 

「そっか…」

 

 

二人とも黙ってしまいました。

 

 

 

 

失業者の朝

 

「さあ、寝るか。明日は遅く起きれるな」

沈黙を破るように斎藤くんが言いました。

 

 

確かに研修中は毎日早起きで、失業した今となっては久しぶりにゆっくりは寝れるのですが、僕はどうしても遅く起きるのは嫌でした。

「明日こそ早く起きないとね。明日はこれまでより早く意地でもワクワクしながら目覚めてやろう。」

僕の提案に斎藤くんも「確かに」と言って眠りにつきました。

 

 

翌朝

 

 

「失業者の朝は早いぞーーー!!!」

そういって斎藤くんを起こしました。

 

朝5時でしたが

「あ、出勤の時間だ!」と失業者ジョークを飛ばしながら彼も起きました。

 

僕はライターとして早朝からこの記事を執筆しはじめました。

 

 

 

それぞれが作業しているとき、斎藤くんがふと

「俺たち友達だよね?」と聞いてきました。

 

この2週間でわかったことですが斎藤くんは確かにヤバイ思想をもったサイコ野郎です。

 

斎藤くんは研修中の日曜日に僕に触発されてブログを開設して記事を書いていました。

その時、ノウハウも教えれるものは全部教えたのですが、「でもまずは書きたいことを書こう」と教えました。

翌日「書いた!」と満面の笑みで報告してくれたのですが「地球は中国のもの」という内容の記事でした。

それくらい何を考えているのか分からないような奴です。

 

しかし、仲間は大切にします。

 

僕は「うん」と言って微笑み返しました。

 

 

「ねえ」

今度は僕が斎藤くんに聞きます。

 

「ん?」

 

「もしも、俺の住む家がなくなったらゲストハウス泊めてくれる?」

 

「当たり前や!」

 

「よかった……じゃあ、俺、そろそろ行こっかな」

僕は新幹線で京都から今ではもう住む意味の無くなった勤務地であったはずの福岡に帰らなければいけません。

 

 

 

僕はキャリーバッグを持って玄関の扉を開けて外に出て「じゃあ、ありがとう。」と告げました。

 

斎藤くんは「じゃあまた!….たぶんどこかで….」と返しましたが、「どこかで」ってどこでだろう?と思いながらその言葉を言っているように見えたのが印象に残っています。

 

ゆっくりと扉を閉め、歩き出さずに鍵穴を見ていると、すぐに内側から鍵がガチャンと締められました。

僕は「やっぱり 斎藤だなあ」とニヤニヤしながらキャリーバッグを引きずりだしました。

 

 

 

 

ジャンプ力に定評のある前田のTwitter→(@jumpmaeda)

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