彼との待ち合わせは、アメリカンヴィレッジにあるTIMELESS CHOCOLATEを指定された。
待ち合わせ場所を聞いて、「さすがだな」と思ったことを覚えている。
そのお店は知るひとぞ知るお店で、ヴィーガンチョコレートが有名なのだ。
私が訪れたことのなかった理由は、「高い」。ただそれだけ。
今となってはその価格の理由もわかるけれど、普通に生活していた頃は安くてお得なチョコレートに手を伸ばしてしまいがちで、そこに産地がどうとか、物語がどうとか、そういうものを求めていなかったわけで、その部分の魅力について理解しようとするのは大切なことだなと、待ちあわせ場所を提示されたとき、改めてそう思った。
私が到着する頃にはすでにダンテさんとそのパートナーであるゆいさんが座って待っていて、お二人は快く私を出迎えてくれた。
私は世間話もそこそこに、早速質問を投げかけることにした。
yuzuka「ダンテさんがヴィーガンをはじめたきっかけって、なんだったんでしょうか」
ーまずは彼がヴィーガンに触れたきっかけについてを聞きたかった。
おそらくこの質問は話し慣れているだろうという予想通り、彼は流暢な日本語で、順序だてて説明してくれた。
海月ダンテ「19歳の時に、世界中でヴィーガンやベジタリアンが増えている理由を自分から調べ始めました。その時に畜産業の潜入捜査とか、畜産業がどれだけ環境を破壊しているかとか、動物性食品がどれだけ健康に悪いのか……とか、そういう記事をたくさん読んで、すごいショックを受けたんです。
僕はアメリカで生まれ育ったので、毎日大量の肉や卵、牛乳を「おいしい、おいしい」と、摂取していました。当時は肉を食べない生活なんて、想像ができなかった。
だからこそ、もっと昔からヴィーガンやベジタリアンのことは知っていたけれど、
「あれって過激的でしょ?肉を食べないなんてやりすぎでしょ」と、ずっと思っていたんです。だけど現実に気づいた時、それまでの自分が、何も知らずに真っ暗な部屋に座っていたのだと気づきました。
そしていろんなことを理解できた瞬間、その部屋に、ぱっと電気をつけてもらえたような気持ちになったんです。それまでは、肉や牛乳、卵を、ただの商品として認識していました。僕も、僕の家族も友達も、みんな何も考えずに食べてましたから、違和感なんてなかった。
だけど、いろんな事実を無視してそれらを摂取し続けるのは、自分の価値観にあわないなと思ったんです。
誰でも環境を守りたいし、動物に幸せな暮らしをしてほしいし、自分も健康でありたいと思います。ヴィーガンというのは、そういう当たり前のことを実現可能にする手段のひとつだと思っているんです。」
ー電気をつけてもらったような気持ち。
おそらくその感覚は、普通の食事を取っていた人たちがはじめてドミニオンを目の当たりにしたときの感覚に近いのではないだろうか。知らなかった現実がはっきりと明確になる瞬間を、私は想像できる。
しかし、とくにアメリカで暮らす人の食生活は、日本人と比べても「THE 動物性食品」である。
私の恋人も外国人で、彼やその友人は肉やチーズが大好きな人が多いので、なんとなく想像がつく。
yuzuka「突然一切の動物性食品を抜くという選択を取られて、苦痛を感じたことはありませんでしたか?」
海月ダンテ「がらりと食生活を変える必要があったので、たしかに最初は難しいのかもなと思った瞬間はありました。でも、最近はヴィーガン向けに豆乳アイスや大豆ミート、チーズ、からあげと、いろんな商品が出て来ています。
ちょっと調べたらなんでも手に入るので、意外と簡単でしたし、肉が食べたいと思うことはほとんどありませんでした。」
ー肉が食べたいと思わないというのは、私には想像がつかない。
ここで、代替食品の話しが出たので、少し掘り下げる。
yuzuka「なるほど。私はこの取材と並行して一通りヴィーガン用のお肉などを食べて見たのですが、正直どれも美味しいとは思えず、一切のお肉をこういうものに切り替えるって、かなりの決意が必要だなと思ってしまいました。」
海月ダンテ「最近のヴィーガン用のお肉はすごく進化していて、インポッシブルバーガーとかだと、本物のシェフが目隠しして食べてもどちらが本物のお肉かわからないというレベルまで来ていますよ」
yuzuka「インポッシブルミート……も、 食べては見ましたが、私は美味しく感じることができなかったんですよね……。ヴィーガンを進めるにあたって、やっぱり「ヴィーガン食でも美味しいんだよ」と伝えることは大切になってくると思うんです。
なので代替肉の味も重要だなと思って口にはしてみたのですが……。あれって、遺伝子開発でお肉とまったく同じような遺伝子のものを作った、まったく別の加工食品ですよね。それにどうしても抵抗があるからなのか、変にギトギトした、すごく体に悪いもののように感じたんですよね……。」
ーそう、実はこの取材と同時並行で、私はヴィーガン食にも挑戦していた。
大豆ミートに豆腐チーズ。様々な食品を口にしてはみるが、どうしても美味しさを感じられない。とりわけインポッシブルミート、ビヨンドミートに関しては、食べきることも難しかったことを覚えている。
海月ダンテ「お肉じゃないということは確かですからね。食べる時に「肉じゃない違和感」を無意識に探してしまっているから、気持ち悪く感じるんだと思います。
あくまで違う食品なわけですから、それを受け入れて、それはそれ、これはこれと認識したら美味しく感じると思いますよ。あとは、 調味料とかで工夫して食べると、もっと食べやすくなりますよ。」
yuzuka「たしかにダンテさんの作るヴィーガン食は見た目的にもすごく美味しそうですよね。それに、最近は大豆ミートを含むヴィーガン対応の材料も手頃な値段でマックスバリュとかに売っていて、驚きました。
保存が効くことを考えたら、お肉よりも安いのでは?と思ったりもして。ヴィーガンって高くつくイメージがあったんですけど、それもちょっと変わってきてるんですかね」
ー私はダンテさんの作る大豆ミートを使ったスパゲティを思い出しながら、そう答えた。たしかに変な感情をまぜこぜにするから違和感を感じているだけで、ひとつの新しい食品だといわれれば、受け入れやすいのかもしれない。
と、ここで、不思議な言葉がとんでくる。
海月ダンテ「そうですね。それに、お肉ってみんなの税金に支えられているんですね。」
yuzuka「税金ですか」
海月ダンテ「例えばマックの300円のバーガーがありますが、あれって本当の値段は2000円くらいなんですよ。」
yuzuka「どういうことでしょう」
海月ダンテ「あのハンバーガーが環境に及ぼしている影響とか健康に及ぼしている問題を考えると、結局そういうものを修復するために、あとあと税金が使われているので、長い目でみたらすごく高い買い物なんです。
大豆ミートとかだと、生産する時に使う水や電気もお肉よりはるかに少ないので、将来的に見るとお得な訳です。」
yuzuka「なるほど。」
ー実はこの話も、ヴィーガンの人からはよく聞く例え話だったりするのだが、ここで気になるのは、それらの情報元が一体どこなのか、という部分だ。
そもそもこの取材をはじめようと思ったきっかけも、ヴィーガンを推奨する人たちの言葉の曖昧さにあったはずだ。
そこで私は、ずっと気になっていた疑問をぶつけて見た。
yuzuka「ちなみに今もお話に出て来ましたが、ヴィーガンの方って「肉食は健康に悪い」というのをよくおっしゃいますよね。それは、どういったものを見てそのような意見になっているのでしょうか」
ー彼は、なんと答えるのか気になった。
海月ダンテ「それはもう世界中で認められている事実なので。
加工肉とかソーセージに関しては、国際癌研究センターとかで、確実に発ガン性がありますと言われています。」
ー私の頭の中に、またクエスチョンマークが浮かぶ。
yuzuka「加工肉の話はよく聞くのですが、ただのお肉でも体に悪いという論文が出ているのでしょうか?」
海月ダンテ「肉が体に悪いというのは、数え切れないほどの研究で証明されています。
肉を食べたら心臓病のリスクが高まるとか、寿命が縮まるとか。
あれはもう、ただただ体に悪い。確実で当たり前なこと、みたいな感じですね」
ー数えきれない研究、確実で当たり前なこと。
これだけ多くのヴィーガンをつらぬく人がこう言い切るのだから、
彼らの中でそれは、疑う余地のない一般常識なのだろう。
それでは、そんな彼らが動物性食品を辞めた上で、どうやって健康を保っているのだろう。
yuzuka「ちなみにヴィーガンの方は、植物と一緒にサプリメントで栄養を補って健康を保っているんですか?もしくは植物だけで生活できる方がほとんどなんでしょうか?」
海月ダンテ「穀物、豆類、野菜、果物、ナッツ、海藻など、 ヴィーガンでも食べられるものたちの中に、人間の必要な栄養素は全て含まれています。
現在含まれていないのはB12だけです。B12は本来微生物によって作られるもので昔は自然に摂取できていたのですが、 今は口にするもの全てが綺麗なものばかりなので、微生物を摂取できないんですね。だから、それはサプリでとります。
もしくは、ヴィーガン用の食品にはB12が添加されているものも多いので、わざわざサプリをとらなくても、そういうものを摂取すれば自然とB12もとることができます。」
ーたしかに、ヴィーガンといえば野菜だけを食べている人というイメージがあるが、そこには「穀物」や「ナッツ類」、「豆類」もあるわけだ。
それに加えてヴィーガンの方向けの加工食品が販売されているのであれば、心強い。
yuzuka「なるほど。では、各栄養素が不足しないように気をつけて、何を食べるかをよく考えながらヴィーガン食を実施すれば、 とくに動物性食品をとらなくても健康を害すことはないということでしょうか。」
海月ダンテ「いや、別にとくに考える必要すらないと思いますよ。だって肉より植物の方が圧倒的に栄養素が多いので。逆に肉を食べている方が健康問題につながるわけですから。」
ーダンテさんに言わせてみれば、肉よりも栄養が豊富な食物や豆類をとるのだから、いちいち細かいことを気にする心配などどこにあるのだ、ということだと思う。
ただ、実際にはヴィーガン食を続けたことが原因と思われる健康被害を訴えている人も多いわけである。そのあたりについてどう思うのかも、投げかけてみた。
yuzuka「ただ、最近ではヴィーガンを公言されていた海外のyoutuberが、健康を害してドクターストップを受けたというのを理由にヴィーガンを辞めていた、というので炎上しましたよね。
有名どころでいうとアンハサウェイさんも、ヴィーガンを辞めています。彼女は、理由があって動物食品を久しぶりに採った際、 「ずっと止まっていたエンジンがかかったような、エネルギーを注入された気持ちになった。」という感覚に見舞われたそうで、それまで自分が、ヴィーガン食によってどれだけ弱っていたかを気付かされた、というような内容をお話されていました。そういうものを見ていると、やっぱり栄養面に充分注意して行わないと健康を害する可能性があるのかなと思ってしまうのですが……。」
ー実はこれは有名人に限ったことではなく、実際に私の友人でヴィーガン食を始めた女の子にもふりかかった出来事だった。
彼女もまた、生理が止まり、脱毛が始まったことで、病院でドクターストップを受けたのだ。しかし、ダンテさんからすると、それは違うらしい。
海月ダンテ「そういうのは妄想が多いですね。」
yuzuka「妄想!」
ーここまで言い切られるとは思っていなかったので、少し驚いた。
海月ダンテ「例えばアンハサウェイさんの例にしても、お肉を口にしてから体の栄養素になるまでには何日も何週間もかかるはずですよね。なので、肉を食べてすぐに「わあ、元気になった」というのは完全な妄想だと思います。」
yuzuka「プラセボ的な感じですかね。」
ー確かに、アンハサウェイさんの例で言えば、その可能性はあるような気がするが、他の人間たちも、果たしてみんな妄想なのだろうか。
海月ダンテ「僕のまわりの友達にもそういうことをいう人はいるんですけど、そういう人たちは、ただ美味しいから肉を食べたいだけだと思います。食べたいけど、実際には肉を食べるのが環境に悪いことも、動物を苦しめていることを知っているので、言い訳しているんですよね。
正直言って、「肉が食べたい」と言いづらいから、「食べた方が健康に良いから仕方がない」と正当化しているだけだと思います。
そうすれば罪悪感を感じずに簡単に逃げることができるので。」
yuzuka「なるほど。そういう考え方なのであれば、肉食に関しては、人間に必要だからではなく、 「お肉が美味しいから食べたい」という理由でのみ行われていることということになりますね」
海月ダンテ「そういうことですね。」
yuzuka「私自身もお肉が好きで、それは否定できません。簡単にヴィーガンだと公言してしまうとこれからは誘われてもBBQにいけないし…と、どうしても娯楽が減ってしまうことに残念だと感じて言い訳を探している部分がありますから。そこに関しては人間の愚かを感じますね。」
ーと、ここまではヴィーガン食を実施する上での健康についての質問が続いた。
ここから先は、「動物のためにどんな未来を描いていくか」、そのためには、どんな活動をやっていけば良いのか、という部分だ。
yuzuka「ダンテさんが啓発活動をする理由は、世界中の人をヴィーガンにしたいという目標に向けてでしょうか?」
海月ダンテ「僕が望んでいるのは、人間と動物が共存できる世の中です。
動物が無意味に殺されたり虐待されたりしないこと。みんながヴィーガンになるというよりは、みんなが動物に優しくなる世界、というのを目指しています。」
yuzuka「なるほど。その観点を畜産業に当てはめると、アニマルウェルフェアに沿った動物との関わり、ということになりますかね」
(* アニマルウェルフェア(Animal Welfare)とは、感受性を持つ生き物としての家畜に心を寄り添わせ、誕生から死を迎えるまでの間、ストレスをできる限り少なく、行動要求が満たされた、健康的な生活ができる飼育方法をめざす畜産のあり方であり、次の5つに項目が定められている。 次の「5つの自由」が定められている。
1.空腹と渇きからの自由
2.不快からの自由
3.痛みや傷、病気からの自由
4.正常な行動を発現する自由
5.恐怖や苦悩からの自由
引用 一般社団法人 アニマルウェアフェア
http://animalwelfare.jp/)
海月ダンテ「そうですね。」
yuzuka「たしかにその部分の問題は根深いと思います。
正直、畜産業に携わっていると、最初は疑問に思っていたことが、少しずつ気にならなくなってしまうのも事実です。
しかし我に帰って、アニマルウェアフェアという基準に当てはめてみると、日本の畜産業がかなり遅れているというのは、やはり現場でも感じたことでした。」
ー日常的になっていて「これくらい」と感じてしまう部分に関しても、明確に基準に合わせてみれば、著しく不足していたりすることも多い。
yuzuka「虐待といえば殴ったり蹴ったりすることを思い浮かべやすいですよね。
でも、実際に現場で殴ったりする人はほとんどいないので、問題視されづらい。
ただ、一生繋がれて過ごすことが虐待ではないのか?動物に優しいのか?というと、そうではない、という部分ですよね。」
海月ダンテ「そうですね。日本の畜産業は世界で見てもワーストですから。
虐待といのは殴ったりするだけではないとおっしゃっていたのはその通りで、そもそも日本の畜産業では動物が日常的におかれている環境自体が虐待に値するんですよね。
一生自分の体を回転させることのできないくらいのスペースに閉じ込められたり
麻酔なしで金たまや尻尾、歯を切断されたり。そういうのって、日本のほぼ全ての農場がやっていることで、それらは立派な虐待ですよ。」
yuzuka「たしかに手術等で局所麻酔さえされていないのは、問題だと感じました。
意識の違いなのでしょうが、その部分に関しては日本の畜産業の改善すべき点だと思っています。 」
ーダンテさんがいうように、実際の現場でも目を瞑れないような現実がいくつかあったことは事実だ。だけど別の章で話したように、彼らはその改善のしかたが分からない。
「外野が綺麗事を話すのは勝手だが、踏み込むなら具体的な提案が欲しい」と思うのは、ある意味当然かもしれない。
保護活動家として、畜産業の分野にも手を伸ばそうとしているダンテさんであれば、どうするのだろうか。
yuzuka「ちなみにダンテさんは畜産動物を保護する施設を建設しようとして動いていらっしゃる、ということもお聞きしているのですが、畜産動物の保護、というと、今牛舎や豚小屋にいる畜産動物たちを引き出してくる、ということなのでしょうか?」
海月ダンテ「まず、施設に関しては、畜産動物だけではなく動物全般を保護する形で、猫がメインになります。」
yuzuka「畜産動物ではなく、猫がメインなんですね。」
海月ダンテ「そうです。ただ、その中で、できる限りの中で畜産動物も保護したいと考えています。」
ー多種の動物を保護する、ということであれば、施設の中身もだいぶん変わってくるだろう。猫であれば危険でなくても、牛であれば危険を伴う、という条件も出てくる。
yuzuka「牛や豚も一緒に保護することを視野に入れているということでしょうか」
海月ダンテ「それもあるのですが、沖縄でとくに多くて問題視しているのは、闘鶏の遺棄です。ボロボロになるまで戦わさせられて、戦えなくなった負けた鶏を山に遺棄しているんですよね。
後処理を考えたら、殺すのは本人たちからしたら面倒臭いのでしょうね。だからそのまま山奥に捨てるんです。」
yuzuka「沖縄には闘牛のイメージが強かったので、闘鶏のことは正直考えたことがなかったです」
海月ダンテ「だからそういう鶏達は保護したいなと考えていますね。
勿論牛舎や豚小屋などで普段殺処分されるような弱いあかちゃん、怪我をした牛や豚もゆくゆくは保護したいと考えています。基本的にそういう子たちはお金にならないからすぐに殺されてしまうので、そういう子たちを牛舎の人たちなどと相談して、引き取るという形を考えています。」
ー怪我や病気の畜産動物たちを見れる獣医師は少ない。
また、世話や餌にも莫大な労力とお金がさかれるだろう。
そもそも突然来た人に、自分の所有している動物を渡すのだろうか。
いろいろな疑問がうかんでくるが、まずは金銭面についての疑問を投げかける。
yuzuka「ちなみに、牛舎で働きながら深く感じたことなのですが、牛という対象だけで見ても、快適な飼育には広大な土地が必要で、動物にとっての理想を目指した設備環境を整えようとすると、何億というお金がかかりますよね。
光熱費や餌、スタッフの人件費などを考えても、毎月の維持費を含め、かなりの金額だと思います。
しかもダンテさんがやろうとしているのは傷ついた動物たちの保護施設であり、観光地としてお金を回収することも難しい。そういった金銭的な面はどうカバーするのでしょうか?」
海月ダンテ「世界中のNPO法人も保護施設もそうなんですが、
ひとりひとりの行動の重なりでできているんです。
やっぱりたくさんの動物を助けるためには治療費がすごくかかるし施設代もかなりかかるんですけど
ひとりでできないことは、何百人、何千人、何万人が力をあわせたら実現できると思うんですね。」
yuzuka「というと、賛同者を集めて、寄付で設備の建設や運営を成立させる、ということですよね」
海月ダンテ「そうですね。「助けたい」と思っている人たちの力を集めて、ひとりではできないことを実現したいと思います。」
yuzuka「ダンテさんは既にインフルエンサーとして影響力があるので、集めやすいというところはありますよね。人間と動物が共存できる世界、実現できることを祈っています」
ーーー
海月ダンテさんのお話は、非常に興味深いものだった。
アニマルフォレストについて畜産動物が主体ではないというのに少し驚いたが、それでも猫だけではなく牛、鶏、豚がそれぞれ共存するような場所がもしも本当に沖縄に作れるのであれば、それは素晴らしいことだろう。
彼には通常の活動家の何倍もの支援者がいるため、彼の見立てからすると、もしかすると不可能が可能になる日が来るのかもしれない
しかし一方で、畜産動物の世話というのは非常に体力と根気のいるものだ。
金銭的な面だけではなく、ボランティアで活動する獣医や飼育員を探すのも難しいであろう。
全てを寄付やボランティアで成立させるというのは、実際問題かなり難しいことだと思う。
不安定な寄付金のみで施設を運営していくことへの不安や、そもそも多くの怪我を抱えた動物が共存する施設の中身という部分で、想像がしにくかったのも確かだ。
その点では今回、他の牛舎に生かすことができる知識というものは得られなかった。
あくまで彼の知名度によって可能になる部分が大きいということだ。
また、肉食についての考えは、やはり専門家に話を伺う必要性を感じたのが事実である。
夢を見ている人を批判する気にはなれないし、するべきではないと思う。
彼の夢自体は素晴らしいものだし、彼であれば実現する可能性もあるのかもしれないから。
しかし私が取材をしなければならないのは現実で、そのためには具体的な解決法や知識が必要なのだ。
ここで、別の視点からの意見も取り入れるため、食事の専門家である栄養士さんにもお話を伺った。彼女は元企業の栄養指導を行なっていて、現在はフリーの栄養士として働いている。
普段からヴィーガンについての監修記事も取り扱っているということで、今回はオンラインで通じて、ヴィーガン食について、専門家の観点からの意見も伺った。
ーーー
ヴィーガンの記事へのコメントや監修はどれだけ気をつけていても批判を産みやすく、顔だしでコメントしてくださる方を見つけるのにとても時間を要したが、彼女は快く、顔出しも受け入れてくださった。
ここからはダンテさんにした質問を、専門家の視点からより深く掘り下げていきたい。
果たして同じ答えが出てくるのだろうか。
※栄養士さんとの対談について※
この記事に予想以上の反響があったため、内容は変わらないまま、あらためて表現方法をふたりで見直して少し書き直しました。また、攻撃的な内容のメッセージなども増えてきたため、彼女の安全を思い、部屋が特定できそうな写真を省かせていただきました。ご了承くださいませ。
追記において全て文献も記載いたしましたので、合わせてご覧くださいませ。
yuzuka「まずは根本的なところについてお伺いしたいです。
肉や魚などの動物性食品を完全に抜いた食事を取るだけで、健康をたもつことは可能なのでしょうか?」
栄養士さん「端的に言えば、海外では「適切に計画されていれば」可能だとされていることが多いです。
例えばアメリカの栄養士を中心とした団体は「ヴィーガンを含む適切に計画された菜食は健康的で栄養的に適切であり、特定の病気の予防と治療に健康上の利益をもたらす可能性がある」としています。
参考文献(1)Melina V, Craig W, Levin S. Position of the Academy of Nutrition and Dietetics: Vegetarian Diets. J Acad Nutr Diet. 2016
一方でドイツの栄養学会は、「妊娠中および授乳中、または小児期および青年期でのヴィーガンを推奨しない」
としているようです。
(2)Ergänzung der Position der Deutschen Gesellschaft für Ernährung e. V. zur veganen Ernährung hinsichtlich Bevölkerungsgruppen mit besonderem Anspruch an die Nährstoffversorgung https://www.ernaehrungs-umschau.de/fileadmin/Ernaehrungs-Umschau/pdfs/pdf_2020/09_20/64_72_Sonderheft_2020_DGE_Vegane_Position.pdf(2021.2.26参照)
これは国によってベースとなっている国民の健康状態や食文化などが違うこともあって、推奨できる・できない、というのに差が出ているのだと思います。
一方、日本人に向けたヴィーガンの食生活について公的な情報は今のところないので、
それらを総括して現時点で言えるのは、 肉、魚、卵、乳製品を完全に除くヴィーガンの食生活を健康的に続けるためには、「一人ひとりの状態に合わせて適切に計画されていること」が大事、ということですね。
単に今の食事からお肉を同量の豆腐に変えたり、食事の全体量がこれまでと同じままだったりすると、栄養が不足してくる可能性が高いです。また、たんぱく質だけでなく、ビタミンB12、ビタミンD、鉄、カルシウム、亜鉛、セレン、DHA・EPAなど、植物性の食材からは意識しないととりにくい栄養素があります。
不十分な知識や誤った方法で続けてしまうと、気がつかないうちに栄養が不足して、生理が止まってしまったり、体調を崩しやすくなったり……というケースもあるということですね。
完全なヴィーガンの食生活を続けながら健康を保つためには、自分の状態や、ヴィーガンの食事と通常の食事との違いを正しく理解しておく必要があります。
なので、畜産動物や環境のためにどうしても完全なヴィーガンの食生活に取り組んでいきたいという場合は、専門家から正しいアドバイスをもらうことをおすすめします。
どうしても独学でやっている人たちは、見ていてあぶなっかしいかなという印象がありますね。」
ーこの時点で、ダンテさんと意見が大きく違っているのが分かるだろうか。
専門家の観点から見れば、一種の食事療法に近い「ヴィーガン食」は、やはりそれなりに偏りのある食事であり、安全のためには専門家の指導が必要であるという認識なのだ。
yuzuka「実際にヴィーガンを始めたけれど中断をしたという方の中には、ガンジダ症を含む、免疫が下がった時に発症するようなタイプの疾患に繰り返しかかってしまったという人も多い印象があるので、私もそのあたりについては、ちゃんとした知識を持たずに偏った栄養のとりかたをしてしまっているのかなと感じていました。」
栄養士さん「そうですね。動物や地球環境に配慮することはとてもすばらしいことだと思いますので、
そこで自身の健康を損わないよう、これまで以上に自分の体と向き合ってほしいです。」
ーでは、例の質問についてはどうだろうか。
yuzuka「あとは、ヴィーガンの方と話していて必ずといって出てくるのが「お肉は体に悪い」という話なんですけど、それに関してはどう思われますか?適切な管理をされたヴィーガン食と比べた場合、やはり肉を含む食事は体に毒なのでしょうか?」
栄養士さん「最近では環境負荷の面で食肉には課題があると言われていますが、健康面でお肉が問題視される理由には
”飽和脂肪酸のとりすぎ”や、”加工肉や赤身肉の発がん性”の話がありますね。
これに関しては、アメリカなど欧米と比べて日本人の平均的な摂取量はとても少ないんです。
もちろん食事には個人差があるので、とりすぎていれば控えることをおすすめしますが、平均的な量であれば過度に心配する必要はありません。(3)厚生労働省:平成30年国民健康・栄養調査結果の概要(令和元年)
また、多少なり、たいていの食べ物には体にとって有害な成分も含まれていることが多いです。
例えば、お米、特に玄米に多く含まれる無機ヒ素は、加工肉と同じくIARC(国際がん研究機関)の評価で「ヒトに対しての発がん性があるグループ」です。
それでも全く食べない方がいいというわけではありません。
1つの食べ物の中にも私たちにとってメリットになる部分・デメリットになる部分の両方があって、メリットがデメリットを上回るように食べているんです。
そしてこれは『誰が』『どれくらい』その食材をとるかによっても変わってきます。」
yuzuka「というと、ヴィーガンに向いていない人が存在するということですか?」
栄養士さん「そうです。例えば今の日本の20代女性は、痩せすぎの方が他の先進国と比べて多いことが問題になっています。(3)厚生労働省:平成30年国民健康・栄養調査結果の概要(令和元年)
ヴィーガン食は摂取エネルギー(カロリー)が普通の食事と比べて低くなりやすいので、食が細く、スリムな方がヴィーガンの食生活をする場合は特に注意が必要です。
成長期の子供や妊婦さんなど、必要な栄養量が多くなる時期も同様です。」
yuzuka「たしかに言われてみたら納得する気がします。では、逆にヴィーガン食が向いている人もいるのでしょうか?」
栄養士さん「ヴィーガンの食生活では摂取エネルギー(カロリー)が自然と抑えられやすい、食物繊維の摂取量が増えやすいという点がメリットとなる方もいるかもしれません。
アメリカでBMI38を超えるの肥満の方を対象とした研究では、食事を低脂質のヴィーガン食に変えることで自然と摂取エネルギーが減って減量することができた、という結果もあります。これは約4ヶ月という短い期間の研究なので、長期的な効果や安全性などはわかりませんが、肥満に関連した病気の方にとっては植物性食材中心の食事を普段の生活にとり入れてみるのは選択肢の一つとなるかもしれません。(4)Kahleova H, Petersen KF, Shulman GI, Alwarith J, Rembert E, Tura A, Hill M, Holubkov R, Barnard ND. Effect of a Low-Fat Vegan Diet on Body Weight, Insulin Sensitivity, Postprandial Metabolism, and Intramyocellular and Hepatocellular Lipid Levels in Overweight Adults: A Randomized Clinical Trial. JAMA Netw Open. 2020
といったように、誰にとっても一概にヴィーガン食が肉を含む従来の食事よりも優れているとは言えないし、その逆も言えないのです。」
yuzuka「確かにそう言われてみると、病院食も何種類も用意されていますもんね。
糖尿病の方向けのものもあれば、低栄養の人が摂取するべき食事もある。
人によって適応が違うというのは当たり前のことかもしれません。」
ーたしかに体型や体質によって食べるべきものが変わるというのは、頷ける。
万能食というのは、本来存在しないわけである。
と、ここで驚きの知識を得ることになる。
栄養士さん「そういえば去年、ネット上でヴィーガンやベジタリアンの方のメンタルヘルスについても話題になりました。
肉の摂取を控えていた人とそうでない人では、肉の摂取を控えていた人の方がうつ病のリスクが高い可能性が示唆された、という研究結果によるものです。」(5)Iguacel I, Huybrechts I, Moreno LA, Michels N. Vegetarianism and veganism compared with mental health and cognitive outcomes: a systematic review and meta-analysis. Nutr Rev. 2020
yuzuka「メンタルに影響があるんですか!?」
ーお肉を食べないことで元気になったというヴィーガンの方を言葉が本当だとすると、まったく反対の研究結果である。
栄養士さん「お肉を控えたからリスクが高くなったのかはこの研究からはわかりません。
心の病を持っている人が菜食の食事を選択しやすい傾向や、動物の苦しみを普通の人より理解している可能性もあるので。お肉を食べない食事で元気になったと感じたという人の話も事実だと思いますので、個人差もあると思います。
お肉は肥満の人や生活習慣病の人にとってはとりすぎに注意したい食品ですが、低栄養状態の人や、もしかするとメンタル面が心配な方には助けとなる食品かもしれません。
そのことを通しても、お肉が絶対に体に悪い、とは言えないかなと思います。
あくまで『誰が』『どれくらい』食べるかの話ですね。」
yuzuka「たしかにそうですよね。
ただ、ヴィーガンの方達からは、お肉を抜いたらすごく肌が綺麗になって、お通じが良くなって健康的になった!という言葉を聞くことも多いです。オリエンタルラジオ 中田さんとかもそうなんですけど、「人間はそもそも草食動物だから」とおっしゃる。そういうのって、科学的に証明されているものなのでしょうか?」
栄養士さん「うーん。食生活には個人差が大きいので、これまでどんな食事をしていたのかによっても影響が変わってくると思います。
もし今まで肉中心で野菜少なめの食生活を続けていた人がヴィーガンの食生活を始めると、野菜や豆類などの摂取量が増えることになる。
そうすれば、ビタミンやミネラル、食物繊維など、今まで不足していた可能性がある栄養素を補えることになり、肌が綺麗になったり、便秘が改善したり、というメリットにつながる可能性はあるのではないでしょうか。
ただ、それは「肉をやめたから」ではなく、「野菜や豆類を食べる量が増えたから」とも考えられます。
もし肉や魚を食べ続けていても、ヴィーガン食と同じくらいの野菜や豆類を増やせば同じ効果が得られるかもしれません。そこについてはちゃんと条件を合わせて比較する必要があるので一概には言えませんが……。」
ー言われてみれば、野菜を一切とらなかった人が毎日サラダを取るだけでも、健康には良い影響をおよぼしそうである。
yuzuka「たしかに野菜の摂取量が大幅に増えますもんね。あとは添加物とか、加工食品が減ったから、というのもあるかなと思うのですが……。」
栄養士さん「食品添加物についてはまたヴィーガンとは違った観点にはなるのですが、食品添加物は科学的に確かめられた無毒性量の通常1/100の量を一生とり続けても体に害がない1日摂取許容量として設定されています。
さらに、厚生労働省の調査結果では実際の摂取量はこの許容量を大きく下回っているんですね。
なので食品添加物の影響というのはここでは考えにくいと思います。(6)厚生労働省HP|食品添加物 よくある質問(一般向け)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuten/qa_shohisya.html
加工食品については、確かにその可能性はありますね。
とらなくなることによって塩分摂取量や過剰な脂質を減らせる可能性があるので、体調が良くなることはあるかもしれません。ただ最近はヴィーガン対応の加工品も増えているので、その点はまた注意が必要です。」
yuzuka「意外です……!」
栄養士さん「あとは単純に、ヴィーガン食をはじめることで栄養面を意識するようになった、というのも大きいのかもしれません。」
yuzuka「たしかに!体に良いものを取ろうとバランスのとれた食事をするようになると思うので、健康面に与えるメリットは大きそうですね。」
ーその話を聞くと、ヴィーガン食のメリットは野菜を取ることであって、肉を抜くことではないのかという思いもを持つようになった。
ここで、もう少し踏み込んだ質問を投げかける。
yuzuka「ちなみに、ご家族がヴィーガン食になるか悩んでいたら、どうしますか?」
ー彼女は少し悩んだあと、言葉を選びながらこう答えた。
栄養士さん「理由にもよるかと思います。
もしも思想としてヴィーガンの生活を貫きたいという場合、否定することはできないので専門家としてできるかぎりサポートしていくしかないかな、とは思います。」
ーここでも一貫して、「専門家のサポート」という言葉が出てくる。
栄養士さん「ただ、ヴィーガン食について、SNSに書かれている内容などは誤った情報が多いと思うので、自分で調べて独学で実施する、というのはすすめないですね。やっぱり専門家の人に体調管理をしてもらいながらやってほしい。
人間の体は複雑です。
欧米で良いとされていることも、人種や文化が異なる日本人にそのまま当てはめても良い結果になるとは限りません。
どんな食事法も多角的な知識と現実的に実践する方法を示してくれる人に寄り添ってもらいたいですね。」
yuzuka「自称専門家みたいな人、いますね。」
栄養士さん「人には無意識に自分にとって都合のいい情報ばかり集めてしまい、反証する情報が見えにくくなる「確証バイアス」があると言われています。だからこそちゃんと自分の状態に合わせて、客観的な視点で科学的な根拠に基づいたアドバイスやサポートが大事だと思います。」
yuzuka「私もネットを見ていて、都合の良い部分ばかりをピックアップしていることに不信感を抱いていました。糖尿病食などと同じで、もしも始めるのであれば、やはり適切な専門家にサポートしてもらいながら摂取したほうが安全なのかもしれないですね。」
栄養士さん「そうですね。インターネット上でもヴィーガンについての情報が増えているものの、髪が抜けやすくなった、爪が割れやすくなったという声も聞くので、方法や個人の差によって変わってくるのかなと思います。
あとはよく話題になる牛乳ですが・・・」
yuzuka「牛乳ですか。」
栄養士さん「骨量は成長期に増加して20歳頃に最大になり、その後しばらくは横ばいですが、女性は閉経後に骨量が減りやすくなります。
日本の女性は世界トップレベルの長生きです。将来骨粗しょう症にならないためには、成長期で獲得する最大骨量を大きくすることと、そのあとも骨量の減少をなるべく減らすことがすごく重要なことになってきます。
ただ日本人のカルシウムの摂取量は少なく、推奨量を満たしていません。その中で、手に入りやすく、たとえ料理ができなくても手軽にとれる牛乳や乳製品は私たちにとって貴重な存在です。
また、カルシウム自体はもともと吸収されにくい栄養素ですが、牛乳や乳製品にはカゼインというカルシウムの吸収を助けてくれるたんぱく質が入っているので、他の食材よりもカルシウムの吸収率が高いというメリットもあって推奨されることが多いです。」
yuzuka「小学校で牛乳を毎日とらされていたのは、そういう理由もあったんですね。
ネットで、「あれはアメリカが洋風の食生活を浸透させるためにやった陰謀だ!」とかいうのを読んだ気がして、たしかにご飯と牛乳って合わないしな、と、少しだけ信じていました。」
栄養士さん「もちろん牛乳・乳製品以外の食材、例えば野菜にもカルシウムなどは含まれていますが、1食分の含有量、食材ごとの吸収率、現実的に毎日用意して食べ続けることができるかなど考えるとなかなか大変な面もあります。
まだまだ研究が続いている分野なので情報もアップデートされています。それも含めて、ちゃんと相談できる専門家の方と一緒にとり入れれば、ヴィーガンの方も健康を損なうリスクが低くなるのではないかと思います。
「正しい知識を元に、計画的に、自分の体に合った方法」が大事だと思います」
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彼女はいろんな文献を使いながら、多方面から分かりやすい説明をしてくれた。
取材が終わった後も、「参考文献を表記した方が良いと思うので、分からない部分があったらいつでも連絡をくださいね」と微笑んだ。
彼女はヴィーガンを否定しないし、だからといって、肉食のことも否定しない。
ただ、インタビュー中一貫して曲げなかったのが「ヴィーガン食に挑戦するのであれば、専門家のサポートを受けながら行なってほしい」ということだった。
どんな分野でも同じだが、本当に何かについてを深く掘り下げようとすると、
それは例外なく果てしない作業で、知れば知るほど、自分の知識の薄さが浮き彫りになっていくものだ。
だからこそ彼女は資格を取って、その分野の専門家になってもなお、言葉を選んで発言する。
彼女が持つ知識が全てではないということを、誰よりも自覚しているからだと思う。
誰もがみんな完璧ではないし、知識については偏りがある。
知りたいように知り、見たくないものに自然と蓋をしてしまうのも、仕方がないとは思う。
だけどやっぱり思ったのは、自分や、勧める人の健康のことを本当に思うのであれば、中途半端で出所不明の情報を信じるより、重要なことについては専門家の意見をあおぐべきだと思った。
当事者と専門家の意見は、私の選択の大きな判断材料になった。