新型コロナウイルス感染症の流行により、働き方が変わってきました。
テレワークという言葉を耳にする機会も増えたでしょう。実際に、在宅勤務に切り替えたという人もいるかもしれません。
今回は、テレワークをすることによるメリットとデメリットについてご紹介します。
その背景にある働き方改革についても解説するので、働き方を見直したい人は参考にしてみてください。
目次
そもそも「働き方改革」とは
働き方改革とは、「働く方々が、個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で選択できるようにするための改革」と定義されています。
これは、少子高齢化や働く人のニーズの多様化といった課題に対応するため。あらゆる課題を改善することで、国民一人ひとりがより良い将来の展望を持てると考えられています。
この働き方改革は、2018年の通常国会にて当時の首相である安倍晋三が、施政方針演説の冒頭にて述べました。
「誰もがその能力を発揮できる、柔軟な労働精度へと抜本的な改革が必要である」という考えのもと、急ピッチで法整備が進められたのです。
まずは、働き方改革を実現するための法律である「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(働き方改革関連法)」が成立しました。
働き方改革が提唱された翌2019年4月1日以降から、関係法律の一部改正が順次施行されています。
改正労働基準法では、時間外労働の上限規制(法第36条、法第139〜142条)が代表的です。時間外労働に上限ができたことで、残業が少なくなり心身の負担から解放された人もいるでしょう。
残業時間の上限は、原則として月45時間、年360時間。臨時的な特別な事情がない限り超えることはできません。
そのほかにも、フレックスタイム制の拡充(法第32条の3)や年5日の年次有給休暇の確実な取得(法第39条)など、労働者を守る法律が施行されています。
働き方改革は、大企業だけでなく中小企業・小規模事業者においても実施が必要です。
働き方改革が目指す働く場とは
誰もがその能力を発揮できる柔軟な職場とは、どのような働く場になるのでしょうか。
2018年、当時の首相である安倍晋三が行った施政方針演説では、働き方改革の成功事例が挙げられました。
その成功事例とは、ベンチャー企業の経営者がテレワークを導入したところ、家庭の事情で大企業を辞めた優秀な人材を集めることができたというものでした。
事情によって通勤に時間を割けないが働きたい気持ちはある、柔軟に働きたいというニーズを的確に捉えたものといえるでしょう。
さらに、新型コロナウイルス感染症の対策のため、在宅勤務を奨励していた企業がテレワークの継続に舵を切っています。なかでもIT企業やベンチャー企業を中心に進んでおり、コロナ後を見据えた新しい働き方へとシフトチェンジしているのです。
オフィスにかかる費用を削減することもできるので、企業にとってもメリットがあるといえます。
こうしたテレワーク化の動きは、新しい働き方・企業の在り方としてさらに増えていくでしょう。
ICT(情報通信技術)利用促進の立場から総務省が、労働行政の担い手の立場から厚生労働省が推進もしています。
本題!テレワークとは
それではテレワークとはどのような働き方でしょうか。
テレワークとはテレ(tele=離れたところで)とワーク(work=働く)を合わせた言葉です。総務省や厚生労働省は、ICT(情報通信技術)を活用し時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方、と定義しています。
自らが所属するオフィスから離れて勤務を行うことにより、ワークライフバランスの実現や人口減少時代における労働力人口の確保、地域活性化への寄与が期待されています。
働き方改革実現の切り札的働き方ともいえるでしょう。
テレワークは、社会、企業、就業者の3方向に対してメリットがある働き方です。
社会では、労働人口の確保や地域活性化、環境負荷の軽減を。企業では、生産性の向上や優秀な人材の確保と離職抑制、ペーパーレス等コストの削減、事業継続性の確保が期待できます。就業者は、多様で柔軟な働き方の確保や仕事と育児・介護の両立、通勤時間の削減といったメリットを得られるでしょう。
テレワークのメリット・デメリット
テレワークは、「tele=離れたところで」という字句のとおり、従来のオフィスから離れたところ労働する働き方です。
テレワークのメリットとデメリットは何でしょうか。
平成30年、東京都産業労働局がテレワークの普及状況の把握や今後の施策展開の一助とするため、テレワーク導入の実態調査を行いました。対象は、常時雇用者30人以上の都内所在企業とそこに属する従業員です。
この調査結果から、テレワークのメリットとデメリットをいくつかご紹介します。なお、テレワークには在宅勤務やモバイル勤務、サテライトオフィス勤務など種類がありますが、ここでは在宅勤務についての調査結果を取り上げます。
メリット1:通勤時間・移動時間の削減
在宅勤務は、通勤をせずに業務を行います。通勤時間は無駄である、という考えを持っている人にとって、業務外の時間の削減はメリットです。
ですが、通勤時間に考えごとをしている、一日のタスクを確認しているなど重要な時間として扱っている人もいます。上手くオン・オフができないという考えもあるかもしれません。
メリット2:育児との両立
育児を行っている会社員の多くは、仕事と育児の両立を難しく感じています。
待機児童の増加が問題として取り上げられ、事業所内に保育所を設置している企業もあるほどです。
ですが、東京商工リサーチが2019年に実施した「事業所内保育所」に関するアンケート調査によると、事業所内に保育所を設置していない企業は全体の98.4%を非常に高い結果になっています。まだまだ保育所不足に悩む人は減りそうにありません。
テレワークによる在宅勤務に切り替えることで、問題が解決されるのであれば、非常に大きなメリットといえます。
メリット3:業務への集中力、定型的業務の生産性の向上
業務をオフィスで行うと、人に話しかけられたり人の視線が気になったりする人も多くいます。
在宅勤務の場合には、業務を行う空間は自分だけ。周りにペースを崩されることもないので、最大限集中できるでしょう。働きやすい空間で業務を行うことにより、業務の生産性も向上するといわれています。
メリット4:家族と過ごす時間の増加
子どもが幼児のうちは、家族と過ごす時間を優先したいと思う人も多いです。
ですが、残業や休日出勤、仕事の付き合いにより上手く時間を設けられないということも。
また、通信教育等の事業を展開しているベネッセコーポレーションが2018年に日本を含む4か国を対象に「幼児期の家庭教育国際調査」を行いました。その結果、父親が平日に子どもと一緒に過ごす時間は日本の父親が4か国中で最も短く、過半数が2時間未満と回答したとのことです。
テレワークによる在宅勤務を行うことで、平日に家族と過ごす時間を安定して設けることができるでしょう。
メリット5:自律・自己管理的な働き方の実現
在宅勤務では、管理者から見えないところで業務を行います。
そのため、自分を律し、管理するという働き方が重要です。これは、IT企業やベンチャー企業ではもちろんのこと、経団連も理想の社員像として掲げています。
在宅勤務は、時代が求める社員を形成する役割を担っているといえるでしょう。
デメリット1:勤務時間とそれ以外の時間の管理
在宅勤務は、毎日の出退勤がありません。一日中家に籠もることで、仕事とプライベートの切り替えが難しくなってしまいます。
疲れを溜めないためにも、努力や工夫が必要になるでしょう。仕事の前には必ず着替える、業務内容に支障が出ない範囲でカフェなどで気分転換を行うといった方法がおすすめです。
また、人によっては長時間労働になりやすい傾向もあります。時間配分をしっかりと行いましょう。
デメリット2:社内コミュニケーションに支障がある
在宅勤務は、ほかの社員に会うことがありません。コミュニケーションの取りにくさや心の距離を感じてしまう人もいるでしょう。
ICT(情報通信技術)を駆使したオンライン〇〇が解決の一助になるかもしれません。オンライン飲み会や女子会、カフェ、ゲームなどが選ばれています。
デメリット3:情報漏洩が心配
テレワークをきっかけにICTを導入することになると、情報保護の観点で信用できない人もいるようです。ですが、技術は日々向上しています。
さらに、細かくテレワークのルールを設けている企業も。情報漏洩が心配な人は、ルールに則り業務を行いましょう。くれぐれも人の目に触れる場所で個人情報を扱わないよう、気をつけてください。
追記:最新の調査結果でわかったメリット・デメリット
東京都産業労働局が行うテレワーク導入の実態調査は定期的に行われています。2020年9月に公表された結果では、新たなメリットを感じる人が多くいたようです。
それは、非常時の事業継続に備えることができるという点。新型コロナウイルス感染症の流行により、企業自体の存続が危ぶまれるという経験をした人もいるでしょう。社内で感染症を流行させないために、テレワークは有効だといえます。
さらに、地震や大雨といった自然災害時にも帰宅難民になってしまう可能性を減らすこともできます。
まとめ
在宅勤務等テレワーク推進の経緯や定義、メリット・デメリットについてご紹介しました。
コロナ禍ということもあり、テレワークは実践や議論が盛んに行われています。コロナだけに限らず感染症を予防する目的でテレワークは有効であるといえるでしょう。さらに、働き方改革の側面でも日本における新しい仕事の仕方ともいえます。
しかし、視野を広げてみると、国際的にはまた違った働き方が推奨されているようです。
アメリカの動きとして、Googleの親会社であるアルファベットが、サンフランシスコ近郊に巨大な企業城下町を建設する構想を発表しました。AmazonやFacebookも従業員のための企業スペース、オフィス空間を賃借する動きに変わっています。
日本ではテレワークが新しい働き方の第一歩となり、オフィスの未来形はどんどん変わっていくでしょう。